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キミのすべてを、受け止めたい・第2話-1
翌朝、半藤を見送ったあと、チームの練習場へ向かった。いよいよ後半戦が始まる直前の全体練習ではトレードでチームに加わった那須泰地の姿があった。
「ミーティングは以上。では新しく仲間になった那須くん、自己紹介を」
ヘッドコーチから紹介を受けた那須は円陣の一歩前に出る。ほかの誰よりも身長が高く、エース以上の風格が滲み出ており、その姿にみなが圧倒されていた。
蒼真は威圧するような雰囲気を感じとり、「まさか……Domか」と警戒したが目が合うとふっと口角を上げる表情にいつの間にか目を奪われてしまった。人を魅了するスター選手というのはこういうオーラなのだろうか、と蒼真は息を呑んだ。
「トレードで加入しました那須泰地です。ご存知の方も多いかと思いますが、はやくチームに慣れて戦力になれるよう全力で投げるのでよろしくお願いします」
キャップを脱いで頭を下げると拍手が起きた。別リーグだから対戦する機会は多くないが、怪我があったとはいえ、最多勝を何回も獲得できる実力があるピッチャーだ。首脳陣の期待は大きいだろう。
コーチから申し送り事項と練習メニューの説明が行われているあいだ、蒼真は叶野の様子を伺った。あれだけ球を受けたいと熱望していたのだから、きっといまも目を輝かせて那須を見ていることだろう。
しかし予想とは裏腹に蒼真の目に映ったのは俯き加減で小刻みに震えてる叶野の姿だった。
「え、潤……?」
あの姿はSub特有の体調不良だ。蒼真は片山トレーナーに駆け寄るか迷っているうちにミーティングは解散となった。ちょうどいいタイミングでそれぞれのポジションに分かれての練習となり、急いで叶野のところへ駆け寄る。
「おい、潤。大丈夫か? 裏で休んだほうが……」
額に大粒の汗をかいて、頭痛に耐えているような苦悶の表情だ。いつものはつらつとした笑顔はどこにもない。すると片山トレーナーも「どうした」と駆け足でやってきて叶野の体を支える。
「たぶん俺が思うに那須さんって、Domじゃないですかね」と片山トレーナーに尋ねる。
蒼真自身は半藤との関係が良好なせいか那須から発せられているDomのオーラにやられることはなく変化は起きなかったが、すこしだけ支配欲の圧力を受けたくらいで済んだ。
「本人からはみんなに公表しないという選択だということは伝えておく」
片山トレーナーは那須の気持ちを尊重してはっきりとDom性だとは言わなかったが、それが答えだ。
「潤はたしか抑制剤飲んでないって言ってたよな」
「はい。まだ激しい変化が現われてないから病院には通ってないらしいです」
「そうか。とりあえず裏連れて行くから、蒼真、手伝ってくれ」
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