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キミのすべてを、受け止めたい・第2話-3

 東北地方への遠征で東京を離れたり、半藤とのシフトとすれ違ったりしているうちに会えない日が二週間以上続いた。  そのあいだ蒼真は半藤と電話やメッセージで朝晩必ずコミュニケーションを取っており、繋がっている安心感を得ていた。  それでも物理的な隔たりは埋まらないので、半藤の体温や穏やかなDomの匂いが恋しくて仕方がない。  今夜は久しぶりに二軍ホーム球場でのナイトゲームだ。蒼真は十八時にプレイボールとなる試合前、軽く食事を摂りながら半藤から来ていたメッセージをチェックした。 『仕事、終わりました』  今日はサウナ施設の昼番だったのだろう。半藤は必ず、朝の挨拶と仕事終わり、それから寝る前に、日常に溶け込んだメッセージを送ってくれる。美味しかった夕飯とか、読んだ本とか、試合内容とか──。  近くにいるなら軽く流すような会話なのに、離れているときのメッセージだと何度も読み返して顔を緩ませてしまう。 『あの報告がないってことは、ボクと会うときまで、ひとりでしないつもりなんですか』  退勤報告のあとに間髪入れずに蒼真へ課した「ひとりでするときの報告」を守っているか問われて、思わず啜っていた麺を吹き出しそうになり咳き込んだ。  蒼真は口元を拭いながら、どう返事しようか迷う。もちろん守っている。というよりも、ひとりで快楽を得ようとしても得られない怖さがあり、する気になれないが正解だ。半藤から受け取る感情は特別であり、それを自分自身で補える自信はすこしもない。 『半藤こそ、どうなんだよ』  やっとの思いで返事をすれば、半藤は『阿方さんが報告しないなら、ボクのことも教えませんから』とはぐらかされた。  それ以上、なにを伝えればいいか悩んでいると、半藤から『いつ会えそうです?』と返ってきた。それは交わりたりという誘いだ。その一文を読んだだけで箸をかみ砕いてしまいそうなほど胸が高鳴る。  言わなければ──。  蒼真はさっき二軍監督に呼ばれて明日から一軍に帯同しろ、と言われたばかりだった。この二週間で三回登板があり、どれも投球内容が抜群に良く調子が上向いていた。ちょうど一軍では中継ぎのピッチャーの状態が悪く試合を落とす出来事があり、そこで今期まだ一軍に上がっていない蒼真に声が掛かったという具合だ。 『じつは明日から一軍に上がるんだ』  一軍は明日から関西方面に遠征だった。次に東京へ帰ってくるのは一週間後。もし今夜会えなければ三週間会えないことになる。  半藤からのメッセージの間隔があいた。もしかしたら蒼真のチームの日程を調べているのかもしれない。 『おめでとうございます。ということは……しばらく阿方さんとはなればなれになりますね。よかったら今夜、ボクの部屋で会えませんか?』  移動は明日の午後だ。つかの間の時間でも会いたい。遠征の準備をして半藤の部屋から新幹線の駅に向かえばいいだろう。 『わかった。遠征の準備が終わったら向かうわ』 『いえ、ボクが阿方さんの施設に行きます。車で来てますよね? 帰りはボクが運転するんで、電車で試合の展開確認しながら向かいますね』  どこまで優しくしてくれるのだろうか。  メッセージのやりとりだけなのに優しさを感じ取ったからか、うっすらと体に異変が起きているような気がした。  熱が出る前兆みたいに皮膚が熱い。武者震いのような悪寒があったが、気のせいだと食事と続けた。それに体調不良になっている場合ではない。試合ではだいじな役割を任されているからだ。

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