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キミのすべてを、受け止めたい・第2話-4

 今日の試合は移籍後初登板の那須が先発だ。まだチームに慣れてないこともあり、調整登板で三回までだと最初から決まっている。そのあとは蒼真が登板することになっていた。打ち込まれるか抑えるかは那須の状態しだいではあるけれど、そのあとのマウンドは勝っていても負けていても試合の流れを作るのに大切な場面だった。  念のため薬を飲んでおこうか。  ピルケースと握り締めて迷ったが、数時間だけ耐えれば半藤に会える。だから薬など不要になるはずだ、と思い直す。 「あっ、蒼真さん、まだいた! 聞いてくださいよー! オレも明日から一軍っす。オレと蒼真さんが上がるから、片山さんも一緒についてきてくれるらしいですよ」  打撃練習を終えた叶野は蒼真が食べている隣に座り、おにぎりをほうばった。食事はケータリングのバイキング方式だ。それぞれ好きなものを選んで食べる。そうは言っても管理栄養士が指導するバランスは守るよう言われており、試合前はすぐにエネルギーに変わる炭水化物を積極的に摂ることが多い。 「おう、潤も片山さんも一緒なのは心強いな。体調悪くなったのはあの日だけなんだろ? ずいぶん調子良さそうだし、一軍でも問題なさそうだよな。それに今日は那須さんとのバッテリーで念願のスタメンマスクじゃないか」  おにぎりを二口で食べ切った叶野はもうひとつ左手に持って口へ運ぶ。 「はい! いいピッチングを引き出して、すぐに一軍でもいっしょにバッテリー組めるように頑張ります」  ふだんよりもっと満面の笑みで言い切った叶野は絶好調というメーターが振り切るくらいに元気いっぱいだ。初めて那須が参加した日とはまるで大違いだった。  あの日以外にも叶野は那須からケアを受けているのだろうか。一回だけのケアで元通り以上の体調に戻ることがあるのか気になって仕方がない。それにパートナーでなくても憧れの人物から受けるケアは格別な仕上がりにでもなるのだろうか──。  蒼真は自分がSubだと公表していないがゆえに、那須にも叶野にも他のチームメイトがいる場所ではダイナミクスの話ができず悶々とした。 「那須さんが降りたあとに俺がマウンド上がってもちゃんとリードしてくれよ?」 「ははっ、それは蒼真さんの投球しだいっすね!」  小柄ながら大食漢の叶野の食べっぷりを見ていた蒼真は登板への緊張が和んだ。チームにとって選手としてもムードメーカーとしても叶野の存在は大きい。今日もいいピッチングをして、叶野といっしょに一軍の戦力として必要とされる存在になろうと蒼真は改めて心のなかで誓った。

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