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キミのすべてを、受け止めたい・第3話-3

 蒼真の願いとは裏腹に世界はしっかりと進み続けている。  朝を迎えた蒼真は片山トレーナーへ体調不良で休むことを連絡した際、まだすこしもサブドロップの症状から回復していないことを伝えた。  一軍がまた遠のいた。  こんな状態ではチャンスは二度と巡ってこないのでは、と息が詰まる。  連絡したついでにスマホの画面から目に入ってきたのはメジャーリーグのニュースだった。 『松崎亮之、遅刻で先発すっぽかす。監督からは厳重注意。次回、集合時間を守れなければマイナー降格か?』  どのスポーツ紙も同じ内容でネットニュースの速報として見出しが躍っていた。  蒼真は、うそだろ、と独り言を言いながら、そのネットニュースを読み漁る。  亮之が時間を守れないなんて考えられなかった。体のケアには誰よりも気をつかっており、コンディション不良は自分の責任だという厳しい考えの持ち主だった。必ず集合時間より早く到着して入念にストレッチをする姿が思い出される。 「まさか、古馬弥登……の仕業か?」  亮之が誹謗中傷されていないか心配になり、彼のSNSまで検索してしまった蒼真はとある投稿に目を奪われた。 『そういや、松崎は前回の登板のとき、具合悪そうだったよな。Subの発作だったりする?』  亮之は世間的にもSubを公表している。しかし当事者でなければ発作かどうかは見た目では分からないのが現状だ。もしその状態がSubの発作であるならば、古馬弥登との関係が揺らいでいるということだろうか。彼とパートナーになってからの亮之は絶好調だったはずだ。メジャーに行ってからも順調で、ハイペースで勝ち星を重ねていたのは蒼真も承知だった。  その投稿を皮切りに、次々と亮之と弥登に関する投稿が蒼真の目に入ってしまう。 『松崎選手のパートナーさんがやってるネイルサロン通ってまーす』  それはSNS上で活躍するインフルエンサーの女性が投稿した内容だった。  そのインフルエンサーは日本人でロサンゼルス在住らしい。VIPしか通えない弥登の店は海を渡っても人気のようで、彼女も常連のひとりのようだ。その投稿につけられてるハッシュタグ『ミトネイル』をたどると次々と施術後の煌びやかなネイル写真が表示された。もちろんすべて美女と呼ばれそうな人物たちの投稿だ。 『今夜はミトさんと、秘密のパーティ』  とある女性の投稿につけられたハッシュタグを見つけた蒼真は「秘密?」と息を呑んでそのハッシュタグを押す。ずらりと並んだ投稿写真のひとつに弥登の両脇をきわどい下着姿や縄で縛られた姿の女性たちが擦り寄ったものがあった。 「なんだよ……これ。弥登は亮之だけでなく、女と遊びまくってるっていうことなのか?」  写真から伝わる女性陣を侍らかしている威圧的なオーラで蒼真は嫌悪感を抱く。亮之というパートナーがいるにも関わらず、なぜ肌を露出した女性たちと「秘密のパーティ」をしているのだろうか。 「……俺だったら無理だわ」  きっと亮之も耐えられなくて体調を崩してしまったのかもしれない。もしかするとふたりがおそらく一緒に住んでいるだろう自宅には弥登は帰らず、自分の店か、はたまた高級ホテルなどで好き勝手している可能性もある。  もしも半藤といっしょに暮らすようになって、帰ってこない日が何日も続いたら──。  考えるだけでゾッとする、と蒼真は身震いをした。ただでさえ具合が悪いのによけいな想像する必要はない、と頭を何度か振ったあと、抑制剤に手を伸ばした。  まいにちちゃんと飲んでおけばよかった。  そればかり後悔の念となって押し寄せる。半藤に頼り切ってしまって、自分の体調変化にうまく気づけなかった。パートナーがいたとしても、自分の体調くらい管理できなければ良好な関係は築けないということだ。 「……しばらく飲んでなかったから余ってるし、多めに飲んで寝てしまおう」  半藤に出会う前のように、薬で抑え込めば、すこしは動けるようになるだろう。そう思った蒼真は指定された容量を守らずに抑制剤を流し込んで、ふたたびベッドへ沈み込んだ。

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