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キミのすべてを、受け止めたい・第4話-6

「あ、阿方さんっ! どうしよう! ボクはなんてことを!」  正気に戻った半藤は蒼真の首に両手を掛けてしまったことに驚き、手を離した。 「阿方さんっ、阿方さん! 起きてください!」  手が離れたことですぅっと息が肺に戻り、蒼真は目を開ける。そこには涙を流して真っ青な顔をしている半藤がいた。 「ボク、阿方さんのこと……ほんとうに独り占めしたくて……」  いいよ、と蒼真は半藤の頬を伝う涙を手の甲で拭う。 「半藤のものになれたって嬉しかった」 「阿方さん──」  蒼真は抱かれた後の軋む体をゆっくり起こし、半藤の唇にキスをした。 「なぁ、半藤」  キスされたことで、半藤は瞬きを忘れたように蒼真から目を離してくれなかった。 「ちゃんと言ってなかったけれど……俺」  半藤が首を絞めるほど気持ちが分からずに苦しんでいたことに蒼真は胸が痛んだ。  気持ちをちゃんと半藤に伝えてなかったことで不安にさせている、と那須に言われたことがひっかかっていたのだ。  半藤に好かれていることに甘えていたこと。  好きなのに、好きだと言いすぎて離れてしまうことに怯えていたこと。  人の心なんて、誰にも分からない。だから言葉があるというのに──。  蒼真はいちどだけ、小さく深呼吸する。 「半藤のことが、好きだ。とってもとっても大好きなんだ。最初はコマンドで引きつけられていたと思っていたけれど、俺だけをずっと見てくれている半藤に浮ついていた恋心がすぅっと穏やかになったんだよ」  ふっと涙を零しながらも半藤は笑い、蒼真を抱き寄せる。 「それはボクにはドキドキしないってことですか?」 「んー、そうじゃないよ。俺、恋愛するのが怖かったんだ。誰かを深く好きになって、その人がいないと生きていけないくらい溺れてしまうのが」  半藤の手のひらが蒼真の髪を撫でおろす。そうでしたか、と呟きながら。 「それがSubの本能だから正常ですよ。だからボクに溺れて欲しいな。ボクなんて十年も前から阿方さんに恋して、ずっと溺れ続けてるというのに」  半藤の鼓動が聞こえる。全身で喜んでいるように蒼真は思えて、胸の音を、とくんと共鳴させた。 「同じ高校に行けなくて、亮之に阿方さんの後輩というポジションを奪われて。だから亮之を甲子園で倒したかった。それも叶わなかったけれどね」 「あれは……死闘だったと思うよ。だからふたりともプロ指名されたじゃないか」  死闘か、と半藤は肩を揺らした。延長十二回の裏まで投げた半藤はエースで四番の亮之にサヨナラホームランを打たれて試合は幕を閉じたのだ。 「ボクは阿方さんと同じチームに指名されなかったんですよ。だから大学へ進学したんです。四年後のドラフトで阿方さんと同じ球団に入ることだけを考えてました──」  蒼真はそうだったのか、と半藤の背中に両手を回して擦る。辛かっただろうな、と思いながら。 「だけどボク、肘の怪我をしちゃって……医師から再起不能って言われて。絶望しかなかったんです、当時は。でもそんなことで阿方さんのことを諦められるわけなくて。そうなったらDomの力を生かして、Subをというのは表向きですが、阿方さんを支える仕事を、とケアもできる熱波師の道に進んだんです」  その歩みは依存というより自分の足で立って蒼真を思い続けているのだ、と気づく。これが亮之のパートナーとの違いだ。自分を求めるSubをすべて受け入れて縛り付けて滅ぼす。それが古馬弥登だと蒼真はネットの記事から推測していた。

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