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キミのすべてを、受け止めたい・第4話-7
「待ち続けて、ほんとうに良かった。想い続ければ報われるってずっと信じていましたから──」
半藤の涙がふたたび流れる。蒼真の体にも落ちて愛おしい。
「でも……ボクがさっきみたく暴走してしまったら、と思うと怖くて」
じんわりと残る首元の痛み。その場面を想像した蒼真は永遠に半藤が世話をしてくれる姿が浮かび、して欲しいとさえ思ってしまう。
「俺も一歩、深みにハマったら、半藤がいないと生きられない状態が幸せだと思ってしまうかもしれない。きっと亮之はその状態になってしまったんではないかと思うんだ」
「パートナーが他のSubと浮気していても、離れられないくらい依存してるっていうことですね」
蒼真は「そのとおり」と頷いた。
「俺たちもときには、深く依存してしまうときがあるかもしれない。そのときは俺がセーフワードを叫ぶ、ってことを半藤には覚えていて欲しいんだ」
わぁ、と嗚咽が大きく漏らした半藤は両手で顔を覆った。肩が震えて苦しそうだ。Domにとってセーフワードはかなり堪えるのだろう。
「ときにはたっぷり甘やかして欲しい日もある。もっと言えば、半藤になにかも委ねて生きてゆきたい気持ちだってある。でもさ、それだと阿方蒼真という人間が無くなってしまうような気がするんだ。ダイナミクスには負けない、個人同士として半藤とはパートナーでいたいし、ずっと恋していたいんだ」
ずずっ、と鼻をすすった半藤が思いっきり蒼真を抱きしめた。
「分かりました。その綺麗な首にボクの指の痕を残せないように、阿方さんへ渡したいものがあるんです。その前に阿方さんといっしょにシャワーを浴びたいんですけど、いいですか?」
「えっ、い、一緒に?」
「はい。これもケアの一部だと思ってくれて構いません」
わかった、と蒼真が返事をすると、半藤にエスコートされながら浴室へ向かう。ひとりでは歩けないくらい脚も腰もくたくたなことに驚く。
「後処理を阿方さんひとりでさせるなんて、ボクにはできないから──」
浴室でたっぷりと馴染みのせっけんを泡立てた半藤は蒼真の体を洗ってくれた。同じように蒼真も半藤の全身を泡でなぞる。
「ありがとうございます。このせっけんの香り嗅ぐと阿方さんのことを思い出すんですよ」
背中を向けてください、と言われた蒼真は臀部も自然と突き出してしまった。
「ボクが言わなくても、その格好ができるなんて、とってもいい子ですね」
半藤に後ろから抱き締められて泡だらけの体同士がぬるりと滑る。半藤の唇が近づいてキスをたっぷりしてくれたのち、臀部の奥の窄まりに指をあてがい、丁寧に洗ってくれた。
「なんだか……ちょっとだけ、淋しい」
中に留まっていた最後の一滴が浴室の床へ流れ出ると蒼真は半藤の欲望を体内に留めることができない器官にせつなさを覚えた。
「なにがです? ボクはずっと阿方さんのそばにいますよ」
いや、そうじゃなくて、と蒼真は首を振った。
「半藤と繋がっていた証が、俺の体から消えちゃったなーって思ったんだ」
「もう、どうしてボクを煽るようなこと言うんです?」
ザーっとシャワーの流水音とともに唇を吸われる音が重なる。たしかに半藤の下半身は手に取るように分かるくらい硬い。
「──抱きつぶしたくなる」と小声で言った半藤はキスを切り上げて、体に残った泡を落とす。
「でもいまは我慢しますね。お風呂だと声が響いちゃいますし」
ふふ、と微笑んだ半藤と脱衣所でお互いにバスタオルで拭き合う。濡れた髪をヘアゴムでまとめた半藤に蒼真は部屋着を差し出した。大きめのTシャツとハーフパンツを身につけると丈がすこし短い。互いの身長の差が顕著に現われた証拠だ。
「阿方さん、あの……さっき言ってた渡したいものなんですが、車に取りに行ってきていいですか?」
「もちろん」
半藤はすぐ戻りますから、と駆け足で部屋を出て行った。
いったい渡したいものとはなんだろうか。
蒼真は首を傾げたものの、どこかで半藤に期待していた。きっとなにか自分へのプレゼントかもしれない。
もしかして、あの日からずっと欲しかったものだったりしないだろうか──。
蒼真は半藤にもらった指輪を左手の薬指にはめて高鳴る胸を抑える。
「これで、いいんだよな……」
脳内では弥登の薄情な束縛に苦しむ亮之の姿が浮かんだ。辛かったら、パートナーを変えることだってできるのがSubだ。野球人生が終わってしまうくらいDomに依存してしまうなんて亮之には似合わない。
「ずっと上を目指すのが、亮之のスタイルだったというのにな……」
パートナーのせいで人生がマイナスになるような付き合いは自分の存在価値を下げるような行為だ。
きっと半藤なら、大丈夫。
信頼を積み上げるのは難しいのに、崩れるのは一瞬だ。
蒼真は自分だけをずっと見てくれていた半藤を心も体も受け入れ、この先をともに歩む決意を胸に誓い、半藤が戻ってくるのを待った。
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