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キミのすべてを、受け止めたい・第5話-3

 目を覚ますと隣には半藤の寝顔があった。時計は朝の七時回ったところだ。  蒼真は首に付けてもらったカラーを手で確認する。そこにはちゃんとまだ付いていて安堵した。 「夢じゃなかったんだ」  半藤とこれから共に歩む時間を誓うカラー。それは蒼真が半藤に支配されていることを世間に知らしめることだ。  もしかするとNomalには芽生えない感情なのかもしれないが、支配される相手が決まることは蒼真にとって「結婚」以上に大切なことだった。  元々、どこか異性に対して好意を抱きにくかったが、相手から言い寄られるとそれなりに嬉しかった。しかし相手と同じ熱量で恋することができるかというと違う。体を交えることができても、それは恋にはなり得なかった。  それが亮之と出会い、恋のようなものをした。しかしそれは恋ではなく憧れと嫉妬だった気づけたのは、半藤に愛されて将来を共に歩む姿を想像できたからだ。 「だからこそ、いまは航希が自分には必要で、大切で……好きな人だって分かる──」  蒼真は寝息を立てて気持ち良さそうに眠りについている半藤の頬へ触れた。ぬくもりが愛おしいなんて彼と出会わなければ気づくことのない想いだったかもしれない。 「ゴールの先がある恋が、こんなにも幸せだなんて」  ずっと想い合える相手がいる。同じ時間を共有できる相手がいる。  今度の休みはどこへ行こう、とか、新しいラーメン屋にいっしょに行きたい、とか。そんなささいなことでも信頼できるパートナーに恋をしている自分は心が穏やかだ。 「俺のこと、ずっと想ってくれていて、ありがとな、航希」  十年ものあいだ、触れ合うことも会話することもなかったのに、まっすぐ蒼真を想い続けてくれた。もし半藤が途中で違う相手を好きになっていたら、いまの幸せはなかったことになる。  半藤が好きでいてくれた十年を取り返すくらいに、もっともっと彼に恋をしたい。 「起こすのは申し訳ないけど、ひとりで起きてるのも淋しい」  蒼真は満ち足りるほど半藤に支配された体をぴったりとくっつけた。早く目を覚まさないか、期待でいっぱいだ。 「ん……蒼真さん?」  寝返りなのか半藤の体が蒼真のほうに向く。眠たそうに手の甲で目を擦っている。 「あ、ごめん……俺のひとりごとうるさかったな」 「いいえ。ボクこそごめんなさい。蒼真さんが起きてるのにも関わらず寝てしまっていて」  まだ頭が働いていないのか、のんびりと話す半藤が珍しくて可愛く思えてしまう。 「ねぇ、蒼真さん。まいにち会いたいです」 「……ん、俺も」  半藤が部屋に戻ってしまうことを思うとほんのりせつなくなっていたのは間違いない。それを半藤も思っていてくれたことに胸が高鳴る。 「もしよかったら合鍵、交換しませんか」  とろりとした瞳で半藤に告げられた蒼真は思い描いていたセリフが現実になり、顔が火照るのが分かった。 「可愛い、蒼真さん。照れてますね。とりあえずは合鍵の交換で、ゆくゆくはいっしょの部屋で暮らしたい──」  半藤の両腕が蒼真の背中を抱き寄せる。離れたくなくて蒼真も半藤の背中に両腕を回した。 「そのためには蒼真さんが一軍に居続けることが条件です。できますよね? ううん、蒼真さんはボクのために素晴らしいピッチングをしてくれますよね?」  もちろんだ、と蒼真は半藤を見上げた。 「今日はきっと腰が使い物にならないでしょうから、明日から練習に参加してくださいね」  半藤に腰をさすられながら、まだ、マウンド姿を見せたい相手がいることに嬉しさを感じた。  もしかするとどこかでずっと見ていてくれたのかもしれないが、それは蒼真が意識をしていないところでだ。  半藤の見ている前で、ベスト以上のピッチングをしたい。  一軍に上がったら、半藤をスタジアムに招待しよう。 「俺、近いうちに一軍上がれるようにまた頑張るから」 「蒼真さんが頑張ってきたこと、ボクはずっと知ってますよ。だから大丈夫です。必ずまた一軍にいてくれなきゃ困るピッチャーになれるはず」  そうなりたい。そうであって欲しい。  夏が終わる前に、チャンスを掴まないと。  蒼真は半藤の腕のなかで近くて遠い一軍のマウンドを思い描いた。

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