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キミのすべてを、受け止めたい・第6話-2

 ホテルの部屋に戻り、私服へ着替えた蒼真は半藤へ電話を掛ける。まだ仕事中かもしれないが、登板して問題なかったことを伝えたかった。 『あ、蒼真さん! 試合終わって疲れているのに、ボクへ電話してくれたんですか? とっても嬉しい!』  ツーコール程度で繋がった電話の向こう側から急いで出た様子の半藤の声が聞こえた。 『まだ仕事中だった?』 『いえ、ちょうど終わって控室で着替えていたところでしたよ。さっき試合の結果見ました! 投げたんですね。しかもピンチな場面でばっちり抑えられたじゃないですか』 『あぁ。それを伝えたくて電話した。ぜんぶ航希は知ってたから、報告はいらなかったな』 『まさか。蒼真さんの声が聞きたいボクとしたら、掛かってこなくてもボクから掛けて聞き出してましたよ』  半藤の落ち着いたトーンの声は電話だとさらに際立つ。ずっと聞いていたいと思ってしまう。 『蒼真さんはこれから食事ですか?』 『そう、今夜は潤とメシなんだ』 『誰かと一緒なんですね』と言う半藤の声色は急に暗くなる。 『遠征のときにひとりで食べることはあまりないかもな』 『そうですか……。ねぇ、蒼真さん。カラー付けて出かけてって言ったら重たいですか? 誰かに見られたら嫌です?』  電話だから見えないのに蒼真は首を振った。半藤がこの関係を世間的に公認してもらいたい気持ちがひしひしと伝わる。 『今日、チームのみんなにはミーティングで言ったんだ。みんないいヤツばっかりでさ、なんだか泣きたくなった』 『どうしてです?』 『自分がSubってことだけでなく、パートナーができたことも言ったから。そしたら大きな拍手してくれたんだよ』  思い出すだけで目頭が熱くなる。ずっと体調不良の理由を隠して辛かったのが嘘みたいに消えた瞬間だった。 『……ボクのことをみんなに話してくれたんですね?』 『名前は出してないけれど、俺にパートナーがいるってことをね。だからカラー付けて出歩いても変に思われない。それに──』  蒼真自身も早くカラーを付けたくて仕方なかった。首がじんじんと絞めつける圧を待っているように熱い。 『もしかしてボクにリードを引っ張られたい、とか?』 『んっ──』 『ちょっと変な声出さないでくださいよ。ボク、蒼真さんが東京へ戻ってくるまで禁欲しようと決めたんですから』 『ど、どういうことだよ、それ』 『帰ってきたら、たっぷりとボクを味わって欲しいからです。きっと蒼真さんだって、ボクの味が恋しくてたまらなくなるはずですから』 『味……、って』 『もう、ちゃんと言わせないでください。分かるでしょ、いつもいっぱい飲んでくれるじゃないですか』  あ、と蒼真は顔を耳の先まで真っ赤に染めた。十日近く会えないということはその間、半藤に抱いてもらえないということだ。抑制剤持ってきたよな、と途端に心配になる。 『だから蒼真さんもひとりでしたりしないで欲しいなぁ。もしものときは何時でもいいから連絡して欲しいです。ボクとしたくなった、って』 『……んっ、そ、そんなことにならないようにするよ』 『それはそれでつまらないですけどね。あーっ、でも蒼真さんと話してると抱きたくなっちゃう。ボクのほうが先に心が折れてしまうかも。強めの薬飲まないと……』 『……じゃあまいにち、電話するから』 『えっ? 電話でする?』 『ち、違う。俺が毎晩、試合終わったら電話するから。それで東京帰った日に、すぐ会おう』 『Good! とっても嬉しいです。約束ですよ、駅まで迎えに行きますから』

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