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第2話 新鮮

 上田佳純は背が高い。俺はずっと漫画を描いて来た。上田は描きたくなるような奴だった。  漫画から抜け出したようなカッコいい奴。スポーツをやっているモテキャラだ。当たり前過ぎて面白くない設定。  昼休みになった。上田が聞いてくる。 「おまえ、昨日昼飯どうしたの?」 「あ、弁当食った。」 「どこで?一人で?」  横から柳瀬誠が聞いてくる。尋問か? 「屋上、戸が開いてたから一人で食った。 風が強かった。弁当のフタが飛んでった。」 「ギャハハ,ウケる!」 「今日は一緒に食おう。技術準備室がいいんだよ。 技術の教師、国谷ってだるい奴がいる。」  入学したばっかりなのに教師と知り合いなのか?  技術準備室にはお茶が用意されていた。 技術教師の国谷が 「ああ、片付けておいてよ。ゴミとか。」  上田はいきなり国谷の足に蹴りを入れた。 ガクッと膝を折ってしゃがみ込んだ国谷に 「誰に言ってんだよ。 どっか行けよ、目ざわりだ!」  すごすごと国谷は出て行った。 「大丈夫なの?先生にあんな事して。 前から知り合い?」 「いいからいいから、気にしない!」  上田と柳瀬はコンビニの唐揚げ弁当を食っている。俺は母親の手作り弁当が恥ずかしかった。 「美味そう!玉子焼きゲット!」 柳瀬に取られた。 「俺も食いたかったな、おふくろの味。」  もう一切れあるのを弁当箱ごと差し出した。 「ゴチーッ。」  二人とも美味そうに食って、俺は恥ずかしさが半減した。 「佳央はおふくろさんが作ってくれるんだな。」 「ああ、俺はコンビニでいいのにな。」 「贅沢だよ。こんなに美味しいのに。」  この事で、俺は上田と柳瀬が好きになった。 上田は教師を蹴るなんてヤバい奴だけど、俺には優しいんで許す事にした。  サッカー部は続いている。 「なんか、体育着で練習ってのもダサいよな。 ユニフォームとか着たいじゃん。」 「金,かかりそう。」

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