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第6話 描きたい

「ああ、眼福、眼福。」 年寄りじみた事を口走った。すぐそばに芸術的な佳純の身体がある。そのタトゥーが見える。  腰履きの制服のズボンがベルトで引っかかっている。その腰を触りたい。 「佳央、エロい目で見るなよ!」  すかさず責めるように誠が文句を言って来た。 「見てるだけだよ。減るもんじゃ無し。」  誠が聞いて来た。 「マンガ、描いてんだって? 同中のやつが言ってた。上手いって。 佳純の事、描いてよ。」  佳純がノリノリで 「へえーっ、じゃ俺ヌードとかになる?」 「えっ,いいの? ヌード描きたい!」  食い気味に言ってしまった。 「やだよ。」  佳純はさっさと着替えて帰り支度した。 「あーあ、汗かいたから風呂入りテェ。 ラブホ寄ってくか、マコ。」 「サウナにしろよ。ボク変態じゃ無いもん。」 「サウナはホモが寄ってくんだよ。」 「タトゥーあると、温泉とか断られるんだろ?」 (そもそも何でタトゥーなんか入れたんだ?) 「惚れた女に泣かれたんだ。」 「それで入れ墨なんか入れるのか?」 (どんな女だよ。ってか、佳純は女知ってんのか?)  ちょっと腹の底がギューっと苦しくなった。 佳純が女を抱くところを想像してしまった。  ジェラシー⁈誠はどういう位置なんだ? 「今度、おまえの家に行っていい?」 「えっ? あ、いいよ。 俺の部屋めっちゃ汚いけど。」  帰り際に佳純が俺をギュッとハグして来た。 「おまえ、抱き心地がいいね。」  そんな事を言われて有頂天になっている俺は、バカだ。  そんな佳純に振り回される日々が続いた。 サッカーは泣かず飛ばずの成績で、顧問の昔話を聞かされる事が多かった。  日本サッカーリーグの話。Jリーグでは無い。 日本にプロのサッカーチームがなかった頃の話だ。先生の青春だろう。先生は70才を超えていると言った。 「先生の頃の選手は誰?」 「もちろんペレ、だ。神様だから。 あと、マンU(マンチェスターユナイテッド)のジョージ・ベスト。」 「誰?」 「ベッカムとかロナウドじゃ無いの?」  先生の言う選手をみんなしらない。 「寂しいなぁ。ネルソン吉村とか、日本にもイケメン選手がいたんだよ。」

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