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第8話 ああいうのがタイプ?
頭の中が佳純でいっぱいだ。あいつが話した言葉の一つ一つをなぞってみる。
「ねえ、誠、ラブホってホント?
一緒に行ったりすんの?」
「あはは、そんなわけないよ、っていうと思った?
行くよ。二人で。この前バイクに二人乗りして行った。」
「そんな事、出来るの?」
「佳純はバイクの免許取ったんだよ。
中型自動二輪。16才になったから。」
「へえ、何やってもカッコいいんだな。
部活の時間になっても佳純はいなかった。先に教室を出たのに。
向こうから女子の肩を抱いて歩いて来た。
「今日、俺サボるわ。顧問の杉山に言っておいて。」
「どこ行くんだよ。」
「わかるだろ、彼女の部屋だよ。」
「ごめんなさい、部活サボらせて。」
綺麗な娘だった。慣れ親しんだ関係が見て取れる。誠がガックリ下を向いている。
「誠の知ってる人? 綺麗な人だね。」
「うん、綺麗。」
ずっと目で追っていた。
「誠、俺のうちに来いよ。飯食っていけ。」
寂しそうな誠を誘って帰って来た。事前にメールで飯を頼んだ。
「いらっしゃい。佳央のお友達ね。
ご飯出来てるからどうぞ。」
おふくろの得意なハンバーグが並んでいた。
妹はまだ帰っていないらしい。
誠と二人で飯を食った。
「すごく美味しい。ありがと、誘ってくれて。」
「いつも佳純と一緒だもんな。
今日のこの組み合わせは珍しいな。」
話を聞くと、誠は,相当なおぼっちゃんのようだった。サッカー部の揃いの黄色いTシャツの差し入れは全部、誠の親からだった。かなりの額だ。
誠は佳純が好きでいつもそばにいる。佳純も誠を大切にしているようだった。
「今日、女の子がいたでしょ。
あの子、どう思う?」
「綺麗な娘だったね。
佳純はああいうのがタイプなのか?
なんか真面目そうで純情そうだ。」
「うん、あの子が来たらボクは遠慮しなくちゃいけないんだ。」
佳純の特別、なんだそうだ。
心がチクッとした。
「誠は平気なの?」
涙をいっぱい溜めた目で見つめられた。
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