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第9話 殴り合い
俺は誠と二人でいても、別にエロい事は考えない。不思議だ。佳純にだけ、身体が疼く。俺は変態なのか? じゃあ、佳純は何なんだ?
「描くしかないんだ。」
まるで芸術家のようにそんなことを思った。
放課後、殴り合いのケンカがあった。佳純と柔道部のでかい奴、河合と言った。
圧倒的に佳純が勝っていた。殴り方が綺麗だ、と見惚れてしまい、仲裁を忘れた。相手はボロボロだった。
先生が数人走って来て何とか引き離した。佳純はあまりやられてない、てか無傷だった。
相手は顔を腫れ上がらせて戦意喪失の体だった。
「もうやめろ!」
「上田、さすが反社の息子!」
「何があったんだ?」
野次馬がうるさい。
「別に。」
佳純は背中を向けて立ち去った。
先生たちも何も言わずに河合の手当てをした。
いつも問題を起こす佳純はお咎め無しだ。俺は腑に落ちない。
「誠は何か知ってるのか?」
「うん。」
ここは佳純の家。あの女子を連れて帰って来た。
「若、お帰りなさい。
あ、順子さんもご一緒ですか?」
ケンカで擦った頬の辺りをハンカチで押さえている。
「触んなよ。大したことじゃねえよ。」
(俺は空っぽなんだよ。)
佳純のベッドに腰掛けて順子が心配そうに見ている。
「帰れよ。ウザいんだよ。」
見つめてくる。また、涙だ。
「泣くな!鬱陶しいから泣くな。
俺がケンカしたっておまえが泣くことねえだろ。
もう帰れ!」
廊下のドアの外に男が立っている。
「佳純、いい加減大人になれよ。
順子を泣かすな。」
「純樹(すみき)は黙ってろ。
親父のお気に入りでいろよ。優等生が、よ。」
ドアに向かって吐き捨てるように言った。
ドア越しに
「順子は妊娠5ヶ月だってよ。
おまえの子だろ。」
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