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第10話 確執

「誰の子だって?笑わせるなよ。 順子、はっきり言えよ。兄貴に、俺の子だって言ってどういうつもりだよ。」 「うん、わかってる。 もう一年前から佳純とは付き合ってない。 お腹の子は佳純の子供のわけないし。」 「純樹は、兄貴は、俺の子だと思ってるんだな。何でそう思わせた?  おまえはずっと純樹が好きだったんだろ。」 「違う。佳純が好きよ。」  佳純と兄の純樹の間には昔から確執がある。 そして父親の稼業の問題。  上田組。古い極道だ。今は指定暴力団と警察に睨まれている。  子供の頃からサッカーをやっていた。近所のサッカーチームからJリーグのジュニアユースに入った。中学で頭角を現し、将来を嘱望された選手だった。  ビーチサッカーの手伝いをしてジー○選手を見た。ものすごく上手い。 (俺もいつかあんな選手になれるかな?)  超中学級ともてはやされた。そして親の稼業が邪魔をする。反社だと糾弾された。 「親の職業は関係ないだろ!」  それでも白い目で見られる。ユースチームは退団を迫った。 「将来有望選手だ。是非にうちのチームに!」 そう言ってスカウトが親に挨拶に来たのに、手のひら返しだった。  中学生の佳純の心はズタズタだった。 それでもサッカーが好きだったから高校に入って弱小チームでもサッカー部に入った。  先輩も少なく全部で8人しかいない。 「あの子、ほら反社の息子。」 「怖ーい。」  中学の時、怖がらずに付き合ってくれたのは順子だった。 (順子は俺の初めての女。 惚れていたと思う。)  親に当てつけで腰にタトゥーを入れた。 ヤクザらしくないトライバル柄のタトゥー。学校でもプール授業で見えてしまう。  佳純は敢えて隠さなかった。順子はよく、佳純の家に遊びに来た。そして純樹に出会う。 「腹の子は純樹の子だろ。」 「ええ、もう堕ろせない。生むしかないの。」 「純樹と結婚しろよ。」 「ダメだって言われた。婚約者がいるって。」

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