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第11話 兄貴

 10才離れた兄貴は、法学部を出て在学中に司法試験に合格した超優等生だった。家が極道でも司法試験は受けられる。父親の自慢の息子だった。  スパーンと純樹をぶん殴った。 「殴って気が済むのかよ。 暴行罪だ。刑法208条。あ、血が出たら傷害罪だ。刑法204条。50万円以下の罰金。15年以下の懲役だ。」 「うるせえ! 順子はどうすんだよ!」 「ああ、子供は生ませるよ。認知すればいいんだろ? 俺は大事な婚約者がいるんだよ。」 「何で順子に手ェ出した? 俺の彼女だって知ってただろう!」  純樹は笑っている。 「親父は知ってんのか?」 「ああ、男だったら養子にすると言ってる。」 「親子揃って外道だな。子供はモノじゃない!」 「極道だよ。身内に弁護士がいるってのに、大喜びだ。」  佳純はやり場の無い怒りに震えた。心が引き裂かれていく。  別れた彼女に哀れみの気持ちがある。 純樹に抱かれたと知った時は (ああ、女ってのは信じるに値しない。) と思ったものだが。 「今でも惚れてんのか? 元カノはヤリマンだったって言うわけだ。  嫁には向かない女だよ。」 もう一発殴った。 「懲役でもなんでもやって見ろよ!」  佳純は人を信じるのが嫌になった。 サッカー選手も諦めた。彼女には裏切られた。 「もう、いいよ。もう、いいんだ。」  中学の終わり頃、誠と出会った。今までに同じ学校にいたのに眼中に無かった。  そいつが懐いて来た。可愛い奴。それでそばに置いた。 (女は懲り懲りだ。子供が出来るなんて。)  別に男が好きなわけでは無かった。ただ、寂しさを埋めて欲しかった。  誠は性格も可愛い奴だった。今でも順子に会う。家をうろついている。それで妊娠のことを知った。兄貴は責任を取ると思っていたから,腹が立つ.兄貴をどうしてくれよう。 (殺してぇ。)

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