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第12話 汗
走っている。佳純が走るのはセクシーだ。俺は一生懸命写メを撮っている。持ち帰って描くためだ。汗ばんだ佳純の身体。描きたい。描き残して抱きしめたい。ますます俺の変態度が増している。
噂で、佳純の彼女が妊娠した、と聞いた。なぜか、俺は絶望的な気持ちになった。
「もう終わりだ。俺の恋心。」
まだ始まってもいないのに、何を考えてるんだ,俺。
あれから、誠に根掘り葉掘り佳純の事を聞き出した。
親がヤクザだという事。誠と一緒に行ったホテルで何をしたのか?
気になっていた。佳純の子供が出来た、という噂の真相。知りたい事ばかりで妄想が膨らむ。
「身体を動かすことが好きだ。」
そう言って佳純はいつも走っている。
「走るのは気持ちがいいんだ。」
爽やかな顔でそう答える佳純は、色っぽい。
なんと、サッカー部に部員が増えた。あの河合という佳純が殴った奴が柔道部員を勧誘してきた。
「やっと試合ができるね。」
誠が素直に喜んでいる。
「敵討ちに来たんじゃねえだろな?」
河合がしおらしく
「俺、柔道向いてないかも。
サッカーやらせて。」
「走れんのかよ。」
「河合はキーパーがいいな。」
「出来んのかよ?
ゴール前で跳べる?」
「大丈夫、まかせろ!」
顧問の杉山が喜んでいる。
「ワシが一緒に走らんで済む。
助かった。もう年だからのう。」
本気でホッとしているようだ。
誠と佳純と、一緒に帰った。ぶらぶら歩いて駅まで行く。
「俺の元カノ、順子って言うの、この前見ただろ。ガキが生まれんだよ。
俺、順子と結婚しようと思ってんの。」
「え?」
誠と俺で、同時に声を上げた。
「法律が変わって16才じゃ結婚できないんだけど
あと、2年。
だから高校辞めて働こうかと思う。」
「何言っちゃってんの⁈
せっかくサッカー部も部員増えたのに。」
「別にどうってことねえよ。」
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