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第14話 結婚
俺は考える。いろいろなことがあった。高校に入って数ヶ月。夏になった。
順子さんは結婚した。仮祝言と言うのだそうだ。大きいお腹をかばって花嫁衣装を着た。
佳純の実家は大騒ぎで、金筋の極道の父親が、古式に則って厳粛な式を挙げた。
誰と誰が結婚したって?佳純の兄貴の純樹さんと順子さんだ。人妻だからさん付けで呼ぶ。
披露宴には俺も呼ばれた。幸せそうな純樹さんと順子さんだった。居並ぶ極道の面々は怖かったが。佳純はホッとしたような寂しいような顔で集合写真に納まっていた。
純樹さんは幸せそうだった。
俺は佳純に聞いた。
「順子さんはいいの?
佳純が好きなんだと思ってた。」
結婚までのいきさつを話してくれた。
兄貴をぶん殴ったと言う。
「兄弟で殴り合い?」
「いや、兄貴は俺に,一方的に殴られてたよ。」
将来を嘱望された大物裁判官の娘との縁談を断って順子さんを選んだと言う。
俺は純樹さんを見直した。彼は言った。
「俺も順子が好きだ。嫌いだったら抱かないよ。
ちょっと縁談の事で迷ったけど、そんな自分が嫌になった。」
一生、自分を偽って生きていくのかと思ったら
人生が虚しくなったそうだ。
尊敬できる兄貴だな、と佳純が羨ましくなった。
「順子さんはいいの?
佳純が好きだったんじゃないのか?」
「いや、兄貴の方がいいんだって。
俺はフラれたんだよ。」
誠が嬉しそうに抱きついた。
2学期、柔道部から5人が抜けてサッカー部に入った。やっとチームらしい人数になった。
ところが佳純がやる気が無い。
俺も絵を描くことに専念したくなっていた。
「どうしたんだよ。俺たちがいないと、大会に登録できないんだぜ。顧問が嘆くよ。」
佳純は遠い目をして
「俺たちはどこに行くんだろう?」
「ゴーギャンか。青春の悩み相談室に行けよ。」
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