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第15話 サッカー

 練習試合を組んだ。 久しぶりのピッチは気持ちがいい。何よりも佳純が生き生きとしている。スパイクの紐を結ぶ手に見惚れていた。 「河合はキーパー向いてんな。 安心して任せられる。」 「佳純がディフェンダーなの、もったいなくない?」 「シュート決めたい奴がたくさんいるんだよ。」  確かにみんな前に行きたがる。 「戻りが遅いんだよ。ゴール前がガラ空きだ。 オフサイドトラップか?怖すぎる。  失敗したら得点になる。  幼稚園のサッカーじゃねえんだよ。  団子になるな!」  初心者のミスばかりだった。 キーパーの河合が一人で頑張っている。相手のフォワードがキーパーチャージギリギリを攻めてくる。佳純一人では間に合わない。  結果は惨敗だった。整列して向かい合い握手をした。相手チームのセンターフォワードが近づいて来た。  佳純と同じくらいの身長だ。180センチを超えている。ゴール前で何度も競り負けそうになった相手だ。 「上田君、一年だって? 俺もだよ。秋川慎治、よろしく。」  握手を求めて来た。 佳純と並ぶとイケメンが二人。目立つ。  それ以来、何かと練習に参加しにやって来る。 「秋川、家近いの? この頃よく来るね。」  Y高校の噂を聞いた。 「えっ、秋川がゲイだって? それで気に入られちゃったのか?  どうする佳純?」  佳純は笑っている。  転校生が来た。このタイミングで珍しい。底辺高だから、ギリギリのやつが引っかかってくることもあるが。  なんと、あの秋川慎治ともう一人。 「花田馨(はなだかおる)だ。よろしく。 サッカー部に入りたい。」  みんな驚いている。 「うちのサッカー部、弱いですよ。やめた方がいい。どこかのクラブチームとかあるでしょ。」  なぜかみんな敬語で話している。気迫を感じさせる二人だった。 「サッカー部が大々的に部員募集してるよ。 入る奴いるのかな?」  男子校の運動部はどこも薄汚くパッとしない。 そこに貴公子ゼンとした秋川が入って来た。  よく見ると整った顔立ちと、背の高いスタイルの良さ。少し長めの髪が風になびく。  近隣の女子高生たちが校門に集まってくるようになった。 「何だか女子が増えたね。」  誠が嬉しそうだ。可愛い顔をしていても、誠も男だった。可愛い娘には弱い。 「別にいいんじゃね? 誠も彼女が出来たら男らしくなるよ。」  男子校の周りが華やかになって来た。

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