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第16話 やる気
学校周辺が賑やかになって来た。
校則の緩いS高で派手な部活は軽音部とサッカー部がダントツだ。派手な髪色もOKな学校だが、タトゥーを入れてるのは佳純くらいだろう。
教師は何も言わない。佳純の家が本物のヤクザだからだ。
それでも、部員が増えたせいか、サッカー部は活気を見せている。
「女子の見学が多いから、みんな気合い入ってんな。」
この高校は、校庭に自由に入れる。
「女が見てるとよく走るよな。」
顧問の杉山から集合がかかった。みんな汗だくの黄色いシャツ姿だ。
「フォーメーションを考える。みんなのポジションも、だ。 あと、ユニフォームのこともな。」
みんなダラダラと部室にはいってきた。
また、馴染んでいない。雰囲気が固い。
秋川と花田はお客さん、状態だった。
「みんな、水臭いぞ.さて。」
S高も昔はサッカーの強豪校と言われた。杉山はなんと、S高のOBなんだと言う。
「底辺校と言ってもこの学校は歴史は古いんだよ。再来年あたり100周年だって。」
誠が情報を提供する。一応マネージャーなので噂を仕込んでくる。
「杉山の事はクラマーと呼べって。
近所のOBの年寄りが言ってた。」
「知ってる?」
誠が得意そうに
「日本サッカー界の父といわれているクラマーコーチのことだよ。シャルケのクラマーじゃないよ。1968年のメキシコオリンピックで日本の代表チームが銅メダル取った時のコーチだ。
初めての外国人コーチだった。」
「マコ、頑張って覚えたねぇ。」
佳純に頭を撫でられて得意そうにしている。
「ユニフォームを作ろう、ということになった。
ここにいる柳瀬のお父さんから寄付を頂いたから、すぐに作れるよ。
どんなのがいいかな?」
「黄色はジェフみたいだし。」
「全身黄色は昔の日立サッカー少年団の色だった。今の柏レイソルのジュニアユースチームだな。」
杉山の蘊蓄は古い。半世紀くらい前の話だな。
そこにみんな集まって来た。
まだ、秋川と花田にはみんなよそよそしい。
「みんな、自己紹介して。」
「じゃ、ボクから。
勝手にマネージャーの柳瀬誠です。
みんなマコって呼ぶよ。」
順番に名前を名乗る。
「上田佳純。」
「遠藤佳央。」
「河合聡。」
「長谷川翔。」
「高村州都。」
「吉田健太。」
「松原蓮。」
「佐藤富之。」
「秋川慎治。」
「花田馨。」
「何だよ、みんな名前だけか?
なんか一言自己紹介して欲しかったなぁ。
私は杉山春樹。71才だ。
サッカー部の顧問ということで、教師では無い。元サッカー選手だ。
じゃあ、ポジションを決めよう。
この前の試合で適性を見たから、暫定的に決めるよ。だんだん実戦で決まって来るから。」
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