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第17話 千本シュート

 だんだんサッカーやる雰囲気になって来た。 放課後のきつい練習にも慣れてきた。  俺は男だちの汗ばんだ身体が眩しい。 おかしな趣味が出て来てしまった。 (男は綺麗だ。今、この時だけなのかもしれない。16才のこの時が尊い。)  いつも練習を観に来る北女子高の娘たち。男たちは、練習に身が入る。 「カッコいい、上田君。」 シャツが捲れて腹のタトゥーがチラ見えすると嬌声が上がる。佳純がこちらに向かってシャツを捲り上げて 「これの事?」 「きゃあっ!」  女子たちを煽る。 「上田くん、本物のタトゥー入れてるんです、か?」 「ああ、そうだよ。見る?」  近づいて来て見せつける。 「やめろよ。下品だろ。」  秋川がケンカを売ってくる。 胸ぐらを掴んでにらみ合う。 「やめ、やめっ!ダメだよ。」  誠が間に入って収める。 「ほんと、水と油だな。」  佳純と秋川は中々打ち解けなかった。 スマートな優等生って感じの秋川は、型破りな不良を気取っている佳純が嫌いなようだ。 「キミたち、練習の邪魔するんならグランドに入って来るなよ。」 「ひどーい! ここの部活、評判なんですよ。 イケメンサッカー部って。」 「そんな事言われてんの?」  嬉しそうに河合たちが寄ってきた。女子たちと楽しそうにしゃべっている。 「おい!シュート練習やるよ。 キーパー練習も兼ねて、千本シュート!」  秋川が仕切っている。 ゴール前で誠がボールを出したのを、走って来てシュートする。次々にシュートを決める。  キーパーは休めない。地獄の千本シュートだ。集めたボールを順番にゴールに蹴り込む。  河合は頑張って止める。PKとほぼ同じ位置から蹴り込むから、キーパーは続けて、弾く、蹴り出す、受け止める。最初の余裕は無くなった。  青い顔をした河合にみんなが順番に蹴り込む。しかも,休みなく。 「誰か、交代しろよ。河合が死ぬぞ!」

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