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第18話 彼女
締めのジョギングでグランドを10周する。もうみんなヘトヘトだ。
キーパーだけでなく、フォワードの千本シュートってのもある。これもキツい。一人で休まずゴール前でシュートするのだ。ボールは次々に目の前に来る。少し離れた所からのドリブルシュートもある。オフサイドにならないようにゴール前までのボールキープ力が問われる。
フォワードだけでなく、全員が得点に絡むように、との杉山の考えで全員がやらされる。
だからいつもクタクタだ。
水道の前で顔を洗い身体を拭いていて遅くなった。女の子が一人、立っている。
部室に入ると秋川が着替えていた。
「いつも、爽やかな、秋川くんじゃね?」
「何だよ、今日はお供はいないのか?」
「ああ、マコは先に帰った。忙しそうだ。」
「あの漫画家は?」
「へえ、佳央の事、知ってんの?
奴は絵が上手いんだよ。
おまえの方こそ、お供の馨ちゃんはいないのか?」
いきなり胸ぐらを掴んできた。
「胸ぐらを掴む癖でもあんのか?
いい趣味だな。」
至近距離でにらみ合って、お互いに気まずくなった。パッと手を離して
「ああ、悪かったな。
なんかおまえムカつくんだよ。」
「お互い様だ。俺たちは犬猿の仲だな。
おまえが猿、な。俺は犬で。」
「誰が,猿だよ。」
「あ、こんな綺麗な猿はいねえな。
おまえ、彼女とかいるの?
外で待ってる奴がいたよ。」
秋川はカバンを取って急いで出て行った。
「なんだよ、挨拶も無しか。」
佳純はなぜか、股間が痛いほどギンギンに勃起しているのを感じた。
(疲れマラ、だな。
あいつに欲情したわけじゃねえな。)
それでも、佳純は複雑な気持ちになった。
最後の一人になり、部室に鍵をかけ、事務所に返しに行った。
ふと、寂しい気持ちになる。
(あいつの彼女を見たからか?)
何だか,里心がついた。誰かに慰められたい。
こんな時、いつも相手になってくれるのは誠だった。今日はいない。
(ヤバいヤバい。マコを俺のおもちゃにしてはいけない。そう言えば、秋川はゲイだって噂があるな。あの花田が恋人か?
いや、彼女がいるんだ。ゲイのわけないな。)
思いは支離滅裂だ。
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