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第25話 試合

「走れ!マークされてるぞ、気を付けろ!」 「戻れ、戻れ!」  シュートが弾かれてボールが戻される。 全力で花田が戻る。秋川も戻る。  ディフェンダーの誠と俺も緊張が走る。 「ゴール前、競り負けるな!クリアだ!」  ボランチの花田が佳純のカバーに入る。 相手チームのフォワードがドリブルで突破してくる。相手のウイングが走り込んでパスが出た瞬間、キーパーの河合しかいなかった。  シュートが決まった。線審が旗を上げている。 「オフサイド!」 「ふう、助かった。」  フォーメーションが以前より形になって来た。 アディショナルタイムも使い果たし、時間切れ。 ホイッスルが試合終了を告げた。  ベンチに戻って来て、 「はあー、俺が間に合わなかった。 ディフェンダーが遅い。得点になる所だった。」  結果、S高は負けてしまった。相手に取られた先制点のまま、1対0 だった。  高校総体はトーナメントで、負けるとそこで終わる。 「あーあ、また、来年だな.」 「これに勝って県代表で高校サッカーに出演出来ればカッコよかったのに。」 「頑張ればテレビに出られたかな?」  俺は見てしまった。佳純が唇を噛んで涙を隠した所を。 「佳純は泣くんだなぁ。そんなに悔しかったのか?」  意外に思った。いつも弱気な顔を見せないのにに、不思議だった。  部員も揃って、練習試合を重ねて来たんだ。 勝ち進んであと一勝で優勝だった。やっぱり、そんなに甘くない。それでも結構頑張ったんだ。  もしかしたら、勝ってお正月のテレビに出られたかもしれない。  この所、みんないつになく頑張っていた。  学校に戻ってミーティングしていると、あの軽音部の奴らがやってきた。 「残念だったな。こんど俺たちのライブがあるんだ。見に来いよ。」  嫌がらせでなく、心から慰めてくれるようでなんだか和んだ。  俺は佳純がユキに会いたがってたのを知っている。 「やあ、会いたかったよ。 試合期間は顧問に止められてたから。 遊べなかったよなな。」 (ああ、やっぱり。 佳純はユキが好きなんだな。)

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