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第29話 ミニライブ
軽音のユキたちが駅近くのライブハウスでミニライブをやると言うので誠と行ってみた。
土曜日の午後、小さいライブハウスだ。
地下に降りて行くと結構な音が漏れて来る。階段の壁にみんなの落書きグラフティがぎっしりだ。
「こんな本格的なライブハウスあったんだな。」
「夜は18才未満は入れないんだよ。」
俺は佳純がステージで歌うと言うので、大いに期待してやって来た。
入り口にたむろしていた軽音の人たちがバックステージに連れて行ってくれる。
手のひらに店のスタンプを押された。
『ライブハウス 原子心母』は、往年のロック好きなオーナーがやっているとんがった店だった。
「俺たちのバンド,名前が無いんだ。
何か、考えてくれよ。」
ユキがみんなに言った。
「高校生の駆け出しのバンドだから,フライヤーにも載ってないんだ。」
それでも、北女子高の娘たちが数人来ていた。
「よぉ、来たんだ?」
佳純がかっこいい。オーバーサイズが袴みたいなジーンズにゆったりしたシャツ。スリムな革ジャンを羽織っている。
「バンドの名前だって?
この店、ピンク・フロイドの名曲のタイトルだな。」
「原子心母、みたいな名前、考えてよ。」
アトミック・ハート・マザーって?
「プログレッシブが好きなんだよ。
オーナーが。」
「ユキたちのバンドはどんな方向性なの?」
「この前カラオケ屋で聞かせてもらったオリジナル、カッコよかったよな。」
ロックとか、カテゴリーはどうでもいいと言う。店の中で『原子心母』がかかっている。
1970年の作品だ。もう55年も前。俺たちにはクラシック音楽だな。オーナーが出て来た。
「顧問の杉山と同じ世代だな。」
「70年代のロックは懐メロなんだよ。」
みんなオーナーに挨拶している。
俺は小さい声で「結跏趺坐」と囁いた。
「それ、バンド名?」
「蓮華坐の事?」
「おもしろいから、とりあえずそれで行こう。」
佳純を交えた初ステージでバンド名は簡単に決まった。結跏趺坐⁈
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