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第41話 キシ
キシは孤高の人だ。いつも一人でいる。
「一人が好きなの?」
「いや、そんな事はないよ。」
ホスト時代、客の女性に聞かれた。人と群れるのは面倒だ。なぜか喧嘩を売ってくる奴が多かった。口数少なく愛想のない態度が喧嘩を誘発する。
人を殴るのは嫌いじゃない。自分でもわかっている。頭に血が上ると止まらなくなる。人を殺めた事はないが、いつかそのタガが外れる時が来るだろう。
(俺は犯罪者だ。身体が欲求している。
頼むから俺を怒らせないでくれ。)
ホストなんて因果な商売だ。
なぜやってるかって?
しがらみができた。ガキの頃だった。止まらない暴力。母親の男を半殺しにした。
母が止めに入って,殺さずに済んだ。
「おまえは怖い子だね。
人を殴るのが好きなのかい?」
当時、母の勤めていたキャバレーの店長に聞かれた。キシが殴った母の男は、店の黒服だった。
日頃から母のヒモになって酷い仕打ちだったから復讐したのだ。おふくろが店長に泣きついて
瀕死の男を助けた。男が死んだら息子が人殺しになってしまう。母は必死だった。
闇医者に担ぎ込まれて男は助かった。
体の大きなキシはその時中学2年生だった。素手で大人を殴り殺せる。
店長は後に上田組の若頭になる。母親は店長の女になった。男を乗り換えたのだ。
店長はキシを可愛がってくれた。
「中坊で人殺しとはいい度胸だ。
でもな、坊主、人を殺めちゃならねえ。
奴(黒服)は命は助かったが、な。
このままだとおまえはいつか人を殺すだろう。
自分を磨け。心をコントロールできるように。
自分に負けるな。」
キシはやがて大人になって上田組にゲソを入れた時も、母の男は叱らなかった。
「俺と同じ道を行かせてしまったなぁ。
極道なんかになるもんじゃねえよ。」
ボクシングをやれ、と言われたが、型に嵌められるのが嫌いだった。
「ああ、そうだな。おまえはそういう奴だ。」
キシの自由にしてくれた。おふくろもこの男に大切にされた。キシはそれだけで満足だった。
上田組の正式な構成員になった訳じゃない。
14才で人を殺し損ねたキシは18才でホストになるまでは町の半グレだった。
家出娘のボディガード兼ヒモって訳だ。整った顔と喧嘩っ早い気質が裏社会に適応した。
繁華街でスカウトされてホストクラブに入った。天性の顔の良さとガタイのデカさで売り出した。店は悪どい商売で有名なM会のものだった。
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