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第42話 刺青

 M会のやり方は、客を使ってホストを縛る。太客を仕込んで売掛を踏み倒す。  借金をホストに背負わせる。売り出し中のイケメンホスト、キシとヤマとキムはハニトラに引っ掛けられた。  酷い話だった。水商売の裏話を語っても仕方がない。ま、話をつけてくれたのが母の男がいた上田組だった。  それ以来、男は父親のように助けてくれた。 上田組の組長のおかげもあった。  助けられたのは半グレでつるんでいたヤマとキシと、キムの三人だった。  この世界には驚くほどゲイが多い。 キシは見て来た。女に惚れさせるのも仕事だ。冷静な目で女を見る。  女は惚れてくる。その見目の良さに寄ってくる。それは仕事。愛なんかない。 「キシ、一緒に帰ろう。」  キムが懐いて来た。 「喧嘩強いね。僕イジメられてるんだ。」 「何ぬるい事言ってんの?」  可愛い顔をしたキムは、若い奴にいいように使われていた。在日韓国人のキムは苦労して来たはずなのに、汚れていない綺麗な目をしていた。  同僚のヤマと出来ていた。ヤマはバイで女も抱く。キムはいつも泣いていた。  話を聞いてやるのはキシ。 あの時、借金の肩代わりを上田組長が背負ってくれて正式に店を辞めた。 「よく辞めさせてくれたな。 一悶着あると思ってたよ。」  M会相手に上田組長の一歩も引かない毅然とした態度に3人は敬服した。  盃をもらったその時に、話し合って刺青を入れる事にしたのだ。和彫り。  組に出入りする彫り師、二代目彫武に頼んだ。時間と金がかかった。  背中一面にヤマは弁天の銭洗い、インドのラクシュミーからヒントを得た美しい天女だった。ヤマはやっぱり、女好きだ。  キムは金太郎の鯉掴み。鯉が滝を登って竜になると言うめでたい図案だった。可愛い金太郎がキムに似ている。  そしてキシは唐獅子牡丹だった。見事な牡丹の花に囲まれた百獣の王。  唐獅子は神社の狛犬にも似た伝説の獅子だ。 「俺の守護神はライオンだな。」 ザイオン、レゲェ音楽の好きなキシに似合っている。  それ以来、組のボディガードとして3人一緒に行動する事が多くなった。  そしてキシの心には組長の次男坊、上田佳純が焼き付いてしまった。初めて見たのは、佳純が中学生の時。7才年下。青い風が吹いた。

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