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第45話 思い

 佳央はずっと同じ事を考えていた。 「佳純って,一体何を考えているんだろう? あんなに人の心を翻弄して、誰もが好きになる。しかも歌もいい。一度聞いたら心地良い声に心が鷲掴みにされる。無神経で冷たい奴かと思ったら、案外情に厚い。)  佳央は気がつくと佳純の事を考え続けていた。 サッカー部も大会予選で敗退し、今はもう緩い練習だ。秋川と花田が異彩を放つ。  ジュニアユースまで行った佳純も、いい選手だ。いくら受験しないからと言って高二にしてはのんびりだった。  軽音部の連中は三年になっていた。 「俺は一応Fランクでも進学するよ。」  ユキがそう言っていた。他のみんなはどこかの専門とかに行くらしい。 「プロデビューなんて夢の話だろ? 音響を学ぶなら○学院がいいかな、と思ってる。」  鏡也と雅が言う。三郎はピアノを生かした音楽大学を目指すらしい。 「先輩方、意外とまじめですね。」 「実はこの前のライブに来てた業界の人が佳純を気に入って,声がかかってるんだよ。」  『蓮華坐』のメンバーでやってみないか? っていう話だそうだ。佳純は全く興味がないって断ったという。 「もったいない!」 「まあ、佳純あっての話だから。 あいつが嫌ならそれ以上進まないよ。」 残念そうにユキが言った。  佳純はいつもフラフラと頭を突っ込むだけで本気にならない。 「そんな熱、ねえよ。」  佳純が熱を感じているのはタトゥーの彼だけか? 「佳純の好きな人に告白とかしたの? 会う事は出来るの?」 「ああ、たまに顔を見るよ。 相手は俺の事なんか眼中に無いだろ。  仕事で関わるだけだから、さ。大人だ。」  俺にはわかった。刺青入れてる人なんて堅気の訳ないし。ヤクザの息子が惚れるのはやっぱりヤクザか。ちょっと考えればわかる事だった。  佳純の思いびとは上田組のヤクザだ。身近にいるヤクザ、と言えばあのボディガードの一人だろう。俺の勘が良すぎるのか、佳純がわかりやすいのか?  

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