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第46話 見つめてる
「佳央、こんな気持ちわかるか?
そばでただ見つめてるだけなんて。」
佳純は自分の思いびとをこんな風に言った。
「そばにいる人なんだね。
組のボディガードやってる人の中にいるね。
佳純、わかりやすいなぁ。」
「佳央だから言ったんだ。
佳央は恋した事あるか?」
俺は佳純に感じるこの気持ちが恋だとは認めたくない。そんなチャラい思いじゃない。
男の友情? それも違うな。
ただ、佳純をセクシーだと思う。妄想はするけど汚したくはない。佳純は完璧なんだ。眺めてるだけでいい。その声を聞けたらもっといいけど。
佳純の歌声は独特だ。俺だけが佳純を理解している。俺にだけわかる美がある。
そんな風に空想の中では俺だけのものだった。
誰かのものになってしまうなんて。
断固阻止しなければ。佳純は飄々として掴みどころがないのがいいんだ。
悶々と眠れない夜を過ごした。
「よおっ、これおふくろさんに。」
何か小さい箱を寄越した。
「チョコレート。この辺じゃ中々手に入らないって順子がくれた。」
佳純の兄貴の純樹さんと順子さん、赤ちゃんの純太の三人は、上田の親父と同居している。気づまりだろうと、兄貴に言ったが、順子さんがいいと言ったらしい。
「また、おふくろに佳純の株が上がっちゃうな。
おふくろ、佳純のファンだから。」
歌ってるCDなんか出たら買い占めそうだ。
「バンド、どうするんだよ。
おまえがいたら、デビュー出来るんだってね。」
「なんか、めんどいな。
俺の家がヤクザだって知ったら、また、どうせ話は流れるんだよ。もういやなんだ。
バンドを巻き込むの。」
佳純はそれでサッカーの夢も諦めたんだった。
才能のある奴にも苦労はあるんだな。俺みたいな凡人にはわからない苦労だ。
「佳純はその人に抱かれたいとか思うの?」
「ずいぶんプライバシーに踏み込むな。
そうだよ。あの手で抱きしめられたい。
いつも平気でマコと絡んでるけど、あの人の事は別だ。」
顔を赤くして可愛くなってる佳純は新鮮だった。
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