46 / 64

第46話 見つめてる

「佳央、こんな気持ちわかるか? そばでただ見つめてるだけなんて。」  佳純は自分の思いびとをこんな風に言った。 「そばにいる人なんだね。 組のボディガードやってる人の中にいるね。 佳純、わかりやすいなぁ。」 「佳央だから言ったんだ。 佳央は恋した事あるか?」  俺は佳純に感じるこの気持ちが恋だとは認めたくない。そんなチャラい思いじゃない。  男の友情? それも違うな。 ただ、佳純をセクシーだと思う。妄想はするけど汚したくはない。佳純は完璧なんだ。眺めてるだけでいい。その声を聞けたらもっといいけど。  佳純の歌声は独特だ。俺だけが佳純を理解している。俺にだけわかる美がある。  そんな風に空想の中では俺だけのものだった。 誰かのものになってしまうなんて。  断固阻止しなければ。佳純は飄々として掴みどころがないのがいいんだ。  悶々と眠れない夜を過ごした。 「よおっ、これおふくろさんに。」  何か小さい箱を寄越した。 「チョコレート。この辺じゃ中々手に入らないって順子がくれた。」  佳純の兄貴の純樹さんと順子さん、赤ちゃんの純太の三人は、上田の親父と同居している。気づまりだろうと、兄貴に言ったが、順子さんがいいと言ったらしい。 「また、おふくろに佳純の株が上がっちゃうな。 おふくろ、佳純のファンだから。」  歌ってるCDなんか出たら買い占めそうだ。 「バンド、どうするんだよ。 おまえがいたら、デビュー出来るんだってね。」 「なんか、めんどいな。 俺の家がヤクザだって知ったら、また、どうせ話は流れるんだよ。もういやなんだ。  バンドを巻き込むの。」  佳純はそれでサッカーの夢も諦めたんだった。 才能のある奴にも苦労はあるんだな。俺みたいな凡人にはわからない苦労だ。 「佳純はその人に抱かれたいとか思うの?」 「ずいぶんプライバシーに踏み込むな。 そうだよ。あの手で抱きしめられたい。  いつも平気でマコと絡んでるけど、あの人の事は別だ。」  顔を赤くして可愛くなってる佳純は新鮮だった。

ともだちにシェアしよう!