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第48話 そんな事はない
「役不足な訳ないじゃん。
俺、キシとデートしたかったもん。」
「はあ、それは光栄だ。じゃあ、デートなら
どこへ行く?何をしたい?」
佳純は、恋人同士みたいに手を繋いで歩きたい、と言ってみた。
「じゃあ、モールに着いたら手を繋ごう。」
キシは佳純が案外かわいい事を言うので嬉しい。キシは心にずっと佳純への想いを秘めて来た。大事な親分の息子を汚す事は出来ない。
ましてキシは男だ。出会った頃からずっと見守って来た。佳純だけを見つめて来たのだ。
一方、佳純は、腰に入れたタトゥーを見せる時が来るのだろうか、といつも妄想して来た。
裸で抱き合って、お互いの身体の刺青を見せ合う時が来るのか?男同士で恋愛なんて叶うのか?
(俺はキシに抱かれたい。
でもそんな日は来ないだろう。
近すぎるのだ。ガキの頃からずっと身近にいたから、一線を越える事はあり得ない。)
いつからだろう、キシの逞しい腕に抱かれたいとか思うようになったのは。
佳純は自分が妄想の中でいつも抱かれる方なのだ。キシの前ではかわいくなってしまう妄想。
キシに甘えたい、その胸に飛び込みたい。
アウトレットモールに着いた。駐車場に車を停めて歩いた。キシが手を取って繋いでくれた。
「大人だね。慣れてる。元ホストだもんね。
たくさん恋人がいた?
たくさんの女を抱いた?」
「歩きながら、大胆な事を聞くんだね。
私は女性経験は少ないよ。」
(男性は多いのか?
今の言い方だとそうなる⁈)
「恋人繋ぎしよう。」
指を絡めて手を繋ぎ直した。手からジンジンと気持ちが伝わってくる。手が触れているだけなのにドキドキして来た。佳純は,ドキドキがキシに伝わりそうで焦った。
「俺も早く車の免許取ってドライブデートとかしたいな。」
「若はバイク乗ってたね。
私もバイク乗りだったよ。
限定解除待ってます。」
「スゲェ、じゃあデートじゃなくてツーリングに行こう。バイク持ってるの?」
「もう手放してしまった。また、買うよ。」
バイカーのキシを想像してまた惚れ直した。
「あの女子高生たちはすごく積極的だったね。
若ならよりどりみどり、選び放題だね。」
「あいつらは嫌だ。うるさくてガキっぽい。
あの日、キシは誰も抱かなかったんでしょ?
よかった。」
佳純はホッとしている。
「ヤマはそこまで行っちゃったけどね。」
「ああ、キムが泣いてた。」
「若も知ってたんだ。泣かれて困ったよ。」
「慰めてあげたの?」
佳純の胸が痛くなった。どんな慰め方だよ。
「ヤマが上手く収めたようだけど。」
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