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第52話 一人暮らし

 佳純の家は組の事務所になっている。 普段から、佳純のそばにずっとキシたちがいる訳ではない。客の接待なんかもやる。  ヤクザの家は案外、来客が多い。いつも人相の悪い人たちが詰めている。  佳純が普段はボディガードはいらない、と言うと客の接待に回る。不穏な事件が頻発した時だけ、身辺警護をする。キシたちは自立しているが部屋住みとあまり変わらない立場だ。体のいいお手伝いだ。交代で留守番をする。  キシの母親と結婚している若頭の黒川がたまに顔を出す。黒川はキャバクラを数件預かっている。 「キシッ。」  佳純が事務所を覗いた。 「あ、若。」  二人は見つめ合ってしまった。走って来て佳純がキシの腕に抱きついた。 「若、キシに用事ですか?」  ヤマに聞かれた。 「うん、暇かな?と思って。」 キシの住まいは近くのマンションだ。部屋住みを明けて今は一人暮らしだった。 「キシの部屋に行ってみたい。」  この前のドライブデートからグッと距離が近づいた気がする。手首のバングルを見ると佳純はキシに会いたくなる。 「キシ、俺に会いたかった?」 「ええ、まあ。」 「俺、会いたくて来ちゃった。 部活サボった。」  キシの笑顔が男っぽくて素敵だ。笑うと頬に出来るシワがセクシーだ。  抱きついてキスしたい。 「ヤマ、キム、ちょっと外すから親父が来たら マンションに戻ったって言って。  若を案内してくるよ。」 「近いの?」 「ええ、歩いて行けますよ。 組に何かあったら駆け付けるんで.」  組の門を出たら手を繋いだ。 「誰かに見られても大丈夫ですか?」 「ふふ、大丈夫。」  高校の制服のままの佳純が可愛くなっている。 長身を折るように身体を屈めて顔を見る佳純の仕草が堪らない。  キシはいつも妄想の中で佳純を抱いている。  マンションは中規模のコジンマリとした建物だった。一階の部屋だ。 「何かあればすぐに出られるように、一階に住むんだ。」  タッチキーで解除したエントランスからすぐの部屋だった。  ドアを開けた。誰かと住んでるかもしれない、とは思わなかった。

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