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第58話 名前
今日も学校から帰ると事務所に顔を出す。部活帰りだから、もう暗くなった。
1日一回はキシの顔を見ないと辛い。
若頭の黒川が来ていた。キシの母親と結婚して一緒に暮らしている。キシを本当の息子のように可愛がる。黒川が佳純に気付いた。
「あ、若、ご無沙汰しております。
なんか雰囲気変わりましたね。大人っぽい。
恋人でも出来ましたか?」
「黒川、どうしてそう思うんだ?」
「いい人が出来たって顔に書いてありますよ。」
(相手はおまえの義理の息子だよ。
知ったら反対するのかな?)
「喜志郎、若の送り迎え、しっかりやれよ。
この頃、拉致が頻発してるからな。」
「そうなの?なんで?」
「繁華街のシマを狙ってM会が入り込んで来てやがるんで。」
「ちょっと、その前に,なんて言った?
キシの名前。」
「はあ、喜志郎ですよ。
黒川喜志郎。こいつのおふくろと籍いれて、こいつとも養子縁組したんで。」
「喜志郎、初めて知った。いい名前だね。
喜志郎、喜志郎、カッコいい名前。」
なぜか顔を赤くしたキシがこちらを見た。
組長が、夕食を一緒に食おう、と言っている。
「一力の寿司を取れ。
黒川も一緒に食おう。麗華も呼んで。
若いもんの分も取ってやれ。」
「いただきます。」
ヤマとキムが電話をかけて注文している。
麗華とはキシの母親だ。絶世の美人。
長年キャバクラでナンバーを張って来た人だ。
優しくて素敵な人。キシがイケメンなのは母親似、だからか。
キシと佳純はこの前から考えている事がある。
ヤマとキムが事情を知っている。ヤマとキムの関係はもうみんなの知る所だった。二人はほぼ、同棲だ。ゲイとみんなが認定している。
キシと佳純もカムアウトして認められたい。
組長が認めてくれるか,が問題だった。
世間の常識を外れても、組長はわかってくれると信じていた。極道は常識を外れた存在だから。
「一緒に暮らしたいんだ。俺たち。キシと俺。」
二人が頭を下げた。親父の顔が真っ赤になった。
「許さん!」
「組長、血圧が!怒らせたらダメだ!」
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