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第60話 動画
いじめ動画が炎上した。隣町の工業高校の校内で撮られた動画だ。
動画の中で、ごめんなさいと這いつくばって謝る生徒を容赦なく殴る。やられている方は痩せて弱そうだ。やってる奴は肩幅も広く強いパンチを手加減なく見舞う。一方的にいたぶっているのが胸糞だ。
「こいつ、誰?」
「ああ、隣町のS工業の札付き。猪飼辰夫だよ。
猪飼土建の息子。
格闘技やってるって自慢してる。
身体も100キロ近いから強いんだよ。」
「ムカつく奴だな。」
「ネットで炎上して警察が動き出したって。」
炎上して、学校でも大問題になった。
猪飼は刑事訴追されて退学になり、保護観察になったらしい。
上田組でも話題になった。他人事ではなくなったから。若頭の黒川さんが若いもんを集めた。
「こいつがゲソ入れたいって言って来た。
猪飼土建の社長直々に頼みに来た。
親父が盃にはまず、適性検査だ、と言ったらしい。」
「就職かよ。ウチの組に?ヤクザになりたい?
笑わせんなよ。上田組は就活対象じゃねえよ。」
親父は何をとち狂ったか、黒川にキシを連れて来させた。
「組に入りたいんだそうだ。
おまえ、本物の極道を教えてやれ。
こいつの父親に頼まれているんだ。
遠慮はいらねえから、極道を叩き込んでやれ。」
デカい、不貞腐れたガキがのっそりと入って来た。父親らしい、これまた人相の悪いジジイがついて来た。
「これは、どうも。今度こちらにお世話になる辰夫です。よろしくお願いします。
性根を叩き直してやってください。」
(丸投げかよ。)
親父がキシの方を見た。
「辰夫だ。キシ、ちょっとこいつとタイマン張ってくれ。」
「大丈夫ですか?壊れちゃうんじゃない?」
キシが笑いながら言った。
「上等じゃねえか。かかってこいよ!」
辰夫は上目使いにガンを飛ばす。キシは上着を脱いだ。広い座敷だ。
「動画見て知ってんだろ。
俺、強いっスよ。
兄さん壊しちゃっていいんスか?」
「ああ、存分にやってくれよ。」
キシの強さを知らない。極道の怖さを。
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