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第62話 血判

 親父がキシの肩を叩いて 「喜志郎、よくやった。 寸止めで猪飼の息子を壊さないでくれた。 ワシからも礼を言う。  猪飼の社長よう、とんだ恥晒しな息子だな。 ウチの盃をもらおうなんて、寝言は寝て言え。」 「親分、めんぼく無い。しかしこの若い人はいい男だなぁ。  是非とも組に入れてもらえんか? どうも私は息子に甘くてクズを育てちまった。  600人の従業員を持つ猪飼土建のトップに立てる男になってもらわねば。こいつを預けたい。  部屋住みから鍛えてくれ。便所掃除でも何でもさせるから、どうか、息子を頼みたい。」  この社長は、とんでもないお気楽ジジイだ。反省の本質がわかってない。上田組長はこの腐った親子を叩き直すのも面白い、と思ったようだ。 「黒川、どう思う?」 「いやぁ、一筆入れてもらいましょう。」  磨き上げた長ドスを畳の上に置いた。指を切って血判を押すためだ。  書道の得意な組員が巻き紙にサラサラと契約文をしたためた。 ー私儀、猪飼半蔵は、息子、辰夫の身柄を上田権助組長に預け、全ての権限を移譲する。  今後、親子関係よりも組の掟が全てにおいて優先する。ー  とんでもない契約だ。上田組長に悪意があれば、どんな事をされても逆らえないのだ。  実の親がする契約ではない。 「父ちゃん、無理だ。怖いよ。助けてよ!」  バコーンッ!  吹っ飛ぶようなパンチが炸裂した。 猪飼社長もかなりの短気だ。 「おまえは警察でもこってり絞られただろう。 けどな、極道は半端ないぞ。生半可な修業ではない。これが現実だ。鼻血を拭け。  弱いものイジメしてる場合じゃねえ。 組員さんたちに教えを乞うんだよ。  今までのような生き方は捨てろ!」 「父ちゃん、俺ここに住むの? 家に帰って必要なもの取って来たい。 スマホとかスィッチとか。」  思わず若いもん全員が唖然としていた。 ヤマが 「ゲームとか、何言ってんの? おまえ勉強も嫌いだろ。潰しがきかねえな。 イケメンでもないし、使えねえ。」  現実をわかっていない。

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