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第63話 喜志郎
佳純は喜四郎の部屋にいた。あのタイマン騒ぎで1日休暇をもらった。
ちょうど土曜日で佳純はキシの部屋に来た。
極道の下っ端は、休みなど無い。究極のブラックだ。結局、キシは無傷で、辰夫を従わせるに至った。もう学校も退学になっていた辰夫は、部屋住みになり、組の雑用をしている。
あの威張り腐っていた、いじめっ子の面影はない。キシにペコペコだ。
高校生の佳純にも敬語だ。あの動画を見た者は、信じられない変わりように驚く。
「まず、礼儀から教えないと,な。」
佳純とキシはほとんど公認のカップルになった。組長からのご褒美と言う事で、親父の本音としては渋々だった。
「キシ、すごく強いんだな。
俺なんか一捻りだろ?」
その横顔を見つめて思う。
「何であんなにケンカが強いんだよ。」
「ケンカってわけじゃない。いつも負ける気がしなかった。一番はおふくろを守るため。
俺の父親だということになっているのは、黒川の仕切るキャバクラの黒服だった男だ。
俺は父親だと認めていないけどな。」
母親にとってこの男はヒモで、キシと一緒に虐待されたと言う。小学生の頃はいつも殴られていた。チンピラのこの男は弱い者に容赦なく暴力を振るった。悔しかった。
許せないのはキシの母親を殴る事だ。
いつか強くなってこいつに仕返ししたいと思っていた。この黒服は上田組に世話になっているにも関わらずM会に寝返った。
「俺はこいつが大嫌いだった。父親とは思えなかった。中学生になったある日、遂に俺はキレた。
母の顔にアザが出来ていた。
仕事に行けない。許せない。
度重なる母への暴力。」
身体も大きくなり、こんな奴に負ける気がしなかった。圧倒的な暴力。潰れる鼻の感触。
あいつを意のままに叩きのめす。拳の快感。
興奮の坩堝。気持ちいい。目覚めてしまった。
「俺は強い!」
「喜志郎、やめて!殺してしまう!
喜志郎が人殺しになってしまう!」
母は身を挺して俺を止めた。
いつも店に出る時、打たれた怪我を隠している母親に、若頭の黒川は気付いていた。
母は昔、黒川の女だったこともある。
「クロ、助けて。喜志郎はあんたの子よ。
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