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第64話 父親

 キシは中学生になったばかりで真実を告げられた。父親。 「ヤクザの子を産みたくなかった。黒川には奥さんがいて、妊娠した時に、あの黒服を頼ってしまったの。  あの黒服の高橋は、チンピラだけど、まだ、堅気だったから一緒になったの。」  黒服は高橋というらしい。今はM会のパシリになっている。ウチのキャバクラはとっくに辞めている。ずっとキシのおふくろのヒモだった。   そして黒川も奥さんと別れた。二人は晴れて結婚したのだ。ヤクザの息子にしたくなかったはずなのに。  本当の父親がわかった。それまで何かにつけて助けてくれたのは黒川だった。  キシの暴力に対する親和性を危惧していた。 「おまえは強い。強いやつはそれを簡単に使ってはいけない。母さんを泣かすな。」 「俺の父ちゃんなんだな。本当の父ちゃん!」  黒川は黙って抱きしめてくれた。気持ちが伝わってくる。  キシは察した。大人の事情。これ以上追求したら母が苦しむ。キシは大人びたガキだった。  佳純は話を聞いて、母親が生きてるだけでいいじゃないか、と思ったが口には出さなかった。  キシの気持ち。身の回りを丁寧に生きるキシは魅力的だ。生育環境だろうか?  キシは弱いものをいたぶらない。守りたいもののためには、変わるけれど。 「自分より強い者にしか闘争心は沸かないよ。」 「カッコいいね。キシ、大好きだよ。」  いつだってその強い腕で抱きしめて欲しい。 (こんなカッコいい人が俺と付き合ってくれるだけで夢みたいだ。過去にたくさん付き合った人がいるんだろうな。考えないようにしてるけど。)  珈琲を淹れているキシの仕草に見惚れる。 「あんなにケンカ強いのに、そんな繊細なこともするんだね。」 その手に見惚れる。長い指で頬を撫でてくれる。 笑ってキスしてくれる。笑った時の目尻の皺が好きだ。 「明日は日曜日だ。何して過ごす?」 「ずっと、ベッドの中にいる。」 「それは、これからだろ。 明日の午後までしか時間がないだろ。 もったいないからどこかに行くか?」  優しくシャツを脱がされて、また、蕩けてしまう。大きな肩に抱き込まれて顔を触る。少しヒゲが伸びてる。喉仏が大きく動く。低い声が好きだ。

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