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第65話 反社

「キシって歌上手い?」 「上手くはないな。佳純は上手いんだろ。 バンドやってたって?」 「うん、でも無理だ。極道は何も出来ないんだ。反社だから。サッカーも潰された。  何やっても目立っちゃダメなんだよ。」  優しく顔を持ってくちづけされた。 「そんなの関係ないよ。 佳純が本当にやりたい事なら。」 「本当にやりたいのは,キシといっしょにいる事だけだ。」  その手で抱きしめられたい。抱かれていたい。 「キシは何でヤクザになったの? 人間のクズのやる事だよ。」 「酷い言われようだな。 確かにこれしか出来ない人間がいる。 佳純は極道の家に生まれて、イヤなのか?」 「ああ、イヤだね。 俺がどんなに頑張っても、全部道を塞がれる。 キシに恋してるのだけは邪魔させないよ。」  肩を抱き寄せられて顔を見られた。 「佳純が俺に恋してるんだ?」 「いいよ。恥ずかしいからリピートしないで。」  この所、この部屋に入りびたりだ。 「なんか、飯作ろうか。」 「キシって料理できるんだね。」 「いろんなバイトしたからね。 飲食が多かった。一緒に酒飲めるといいな。」  簡単な酒のつまみ、みたいなものを作ることが多い。 「いいね、飲みたい。年なんか関係ないよ。 キシは酒、何飲むの?」 「ああ、いろいろだな。ビールか?ワイン? ウヰスキーもあるよ。日本酒も。」 「キシって酒飲み、なんだな。」 「ああ、酒は好きだ。酒に逃げた時もある。」  首に抱きついた。 「キシに、酒を飲まなくちゃいられなかった時があるんだ?」 「いや、そんなたいそうな事じゃないよ。」 (寂しくて一人がつらい時もあった。 絶対にそんな弱音、吐けないけどな。) 「大人はどんな時,酒飲むのかな。」  髪に手を入れて頭を抱えられた。 熱いくちづけ。 (おまえがいれば寂しくないよ、佳純。)

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