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第66話 日常

(学校はクソだ。俺は停滞している。人生に。 躓いているというか。)  佳央は何もやる気が出なくなった。 「輝かしい未来」なんてこの先,待っている気がしない。サッカーだけが楽しみになっている。身体を動かすのはいい。  精神に及ぼす影響は計り知れない。走って走って疲れ果てた後は何も考えなくて済む。  ただ、走るだけではない。人と連携する。仲間がいる。競技の面白さ。昨日出来なかったことが今日は出来る。阿吽の呼吸で伝わる。  そんなに熱い友情というわけではないと思うのに、サッカーをやっている時は相手を信頼している。 「杉山先生、若い時、サッカーに命を燃やしたんでしょう?」 「おまえ、言い方、恥ずかしいなぁ。照れるよ。」  杉山監督は嬉しそうだった。 「国体で優勝したんだよ。その時の仲間とは今でも付き合いがある。  毎年元日には国立に天皇杯を見に行ったよ。」  情報が古い。でも気持ちはわかる。 勝てなくても一緒に走っただけで仲間意識は芽生える。 「男同士の友情っていいだろ?」  俺は佳純のことをチラッと考えた。友情を超えてこの気持ちはますます募る。この所佳純はほとんど部活に顔を出さない。 「上田はどうしたんだ?」 「恋してるんだよ。」 「えっ?」  秋川と花田が驚いてこっちを見た。  県大会も終わって張り合いのなくなったこの時期に真面目に練習に来る秋川たちに申し訳ない気持ちになる。  練習試合を組む。部員は一年が入って来たから少し余裕がある。 「キャプテンは秋川だろ。練習試合やろうぜ。」 「佳純を連れて来いよ。 ディフェンダーがいない。」  キーパーの河合も頑張っている。だが、ゴール前、俺と誠だけじゃ不安だった。 「結構みんな練習に出て来てるし、 試合出来そうだよな。」  杉山が試合の相手を見つけて来た。 あの辰夫の通っていたS工業だった。辰夫は厳罰を受け退学をしたが、煽っていた悪仲間が残っていた。しかもサッカー部だという。  ラフプレイで有名なS工業。それでもサッカーはいつもシード校だ。汚い勝ち方をするので有名だ。秋川は試合したことがあるらしい。 「壊されないようにしろよ。」 秋川が言った。

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