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第68話 ダサい仕返し
S工業高校の奴らは、猪飼辰夫以外、イジメの具体的な立件は見送られた。
動画を撮ってSNSにあげた奴、その場で煽って取り囲んで逃げられなくした仲間たち、みんな共犯だ、が。
いつも身体の大きな猪飼に怯えていたのも事実だが、イジメ動画が発覚した段階で、全部辰夫になすりつけた。
辰夫は警察で取り調べられ事情を訊かれた時、その事を知った。
「みんな、猪飼を怖がっていました。
誰も怖くて止められなかった。」
と、自分たちも被害者だと言い張った。そんな事はない。煽り立ておもしろがって火に油を注いだ連中だ。いじめられるのを見て楽しんでいた。
暴力を傍観者として見る事を楽しんでいた。
「汚ねえな。最初にカツアゲされたやつがいて、被害者の工藤がカツアゲを文句言って来た。
言われた連中が猪飼に、ムカつくからボコボコにしてくれ、って言って来た。
それに乗ってやっちまった俺も悪いが,裏で糸引いてたのは今関ってやつだ。
今関はいつも自分の手を汚さない。人を利用して悪質な事をするんだよ。
今になって色々な事が見えて来た。」
辰夫は極道の部屋住みになって、兄貴分のヤマとキムとキシにその事を話していた。
そこに誠の事件だ。
「事情聴取されただけで済んだのに、学校と親に厳しく叱られた事を根に持っていたんだな。
主犯は今関だ。」
キシたちは、厳しい取り調べを受けたという辰夫を客観的には許していた。保護観察という罰を受けている。
今では心を入れ替えて、部屋住みの決まりを守ってトイレもピカピカにしている。
「人は変われるんだ。ヤクザの言う事じゃねえかな?」
「若、誠さんは助かったでしょうけど、ケジメを付けさせてください。
この舐め腐った野郎を締めないと収まりません。」
「ああ、やるか?くれぐれもサツカンに目ぇ付けられねえようにな。」
みんなで作戦会議だ。触法しない抜け道を探った。
「今関ってS工業のサッカー部でしたよね。
試合で締める事にしましょう。」
「誰が、高校サッカーなんかやるんだよ。」
「練習試合でしょ。公式戦じゃないなら、
転校生を使いましょう。」
試合までに、なんと8人の転校生が佳純たちの学校に入って来た。
そして全員サッカー部。
原付バイクで誠を跳ねたのは、今関の取り巻きの一人だった。わかっても警察には言わない。
「スポーツでケジメを付けて貰いましょう。
健全だなぁ。」
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