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第74話 動画
キムが動画を見られるようにプロジェクターを用意した。
「校長も保護者代表の後援会長もいらっしゃるから都合がいい。
これ、見てもらいましょう。
SNSに出回ってる動画です。」
映し出されたのは、まず、猪飼辰夫の一方的に殴る動画だ。でも、これは出回っているものよりアングルを少し引いているので、周りを取り囲んでいる連中の顔がよく分かる。
一人一人、はっきりと顔が分かる。
「やれやれ!もっと本気でグーパン入れなよ。」
バゴッ!グーパンチが顔面に入った。鼻血が飛び散る。
「いいねぇ、もっと顔面狙って。鼻潰せ!」
今関の声だ。辰夫もいいように使われている。
立ち上がって蹴りを入れる。うずくまって、くの字に体を折り曲げる生徒に、尚も蹴りを入れる。みんなが煽って囃し立てる。
辰夫がもうやめようとすると、
「なんだよ、猪飼、おまえシメるよ。
もっと本気出せよ。殺してもいいよ。」
また、腹のあたりに蹴りが入る。
「ヤバいよやばいよ。内臓破裂するよ。」
ふざけて言い募る。それでも見ている奴らはやめさせない。スマホで撮っている女子が3人ほどいた。これも楽しそうに煽っている。
やられていた生徒はもう頭を抱えて転がっている。
「もっとやれよ。つまんねえ奴だな。」
今関が脅すように言う。
「おまえがやらねえと、客が集まんねえんだよ。」
今関はリンチ動画を見せて金を稼いでいた。それが流出してキムの手に渡っている。
「これ、犯罪ですよね。映ってるの今関君でしょ。音声も入ってるし。」
別の動画に変わった。どこかの屋上で撮っているようだ。やっぱり、一人を大勢で囲んで囃し立てている。強いと言われている奴が一方的に殴っている。顔が腫れ上がって血だらけだ。
今関の声がハッキリと聞こえる。取り巻きたちと話している。
ー俺さ、こう言うビデオの監督になりたいんだよね。スナッフビデオ撮りたいんだ。
誰か殺してくれない?おまえ、死んでくれる?ーこいつムカつくから殺しちゃっていいんじゃね?ー
音声がハッキリと聞き取れる。
「胸糞だろ。君たち、今関君と共犯って事でいいかな?」
キムが言う。
「そこのお父さんも校長先生も。
見ない事にしてたんでしょ。共犯って事で。」
「私たちは警察と仲良しなんですよ。」
ヤマが落ち着いた口調で言った。
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