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第77話 等身大

 こんな大作は初めてだ。佳央は、絵描きになりたいわけじゃなかった。ただ、この美しい存在を残しておきたかった。描いても描いても納得のいくものには程遠い。それでも佳純は佳央にとって圧倒的な存在なのだ。いつも部活で気軽に肩を組む。家に遊びに来て、俺のベッドで眠ってしまう。 「描いてくれるなら脱ぐよ。」  そんな震えるような事を言う。 「触るなよ。変な気持ちになるとヤバいからな。 タトゥー全部見たいだろ。」  脇腹から腿にかけて彫られたタトゥーはいつも描ききれなかった。目を向けるのがツラい。  もうエロチックな気持ちは無くなった。ただ、神々しいだけだ。  佳純が帰った後も描き続けた。数日かけて仕上げた。描きたい気持ちが先走る。 「出来た。これでいい。これ以上何かを足すと台無しになる。」  色々考えて、県展に出品することにした。何かを成し遂げた,と言う実感が欲しかった。  躊躇したが人の目に触れさせたい。みんなに見てもらいたい。屈折した気持ちだった。  学校には言わなかった。 『今、ここに舞い降りたダヴィデ』と題して。絵画作品としてはさほど大きくはないが、佳央にとって初めての出品で緊張して搬入した。  F200号。プロの業者に頼んだ。画家って大変なんだな。金がかかる。佳央は画家になるつもりはない。 (男のヌードなんて拒否反応が怖いな。)  どうせ目立たぬところで終わるのだ。それでいい。いつも陰キャだ。目立つのは苦手。  ただ、佳純に対する思いをぶつけた。神話に題材を借りて佳純のエロい身体を描きたかった。  ゴリアテを退治するダヴィデ。ミケランジェロはダヴィデを3年かけてつくった。佳央は3ヶ月。  その頃、例のイジメ動画が、別のバズり方をしていた。  あの動画に映っていたJKの事だ。 今関の恋人だと言う女子を含む3人の名前が特定された。あの北女子高の生徒だとわかった。  やっぱり、制裁されるのだ。あの暴力を止めることもしないで、煽って、動画を撮っていた事。  それがネット民から反感を買っている。  佳央は少し知り合いになったノッコたちに聞いて見た。部活の時に見学に来ているノッコたちに声をかけた。 「なんかあのイジメ動画で周りにいた生徒が、晒されてるみたいだけど。」 「そうそう、あの周りにいた奴らが無傷なのは許せない、って炎上してる。」  沙織が 「あの今関っていう主犯の奴の彼女、あたしもよく知ってる娘なんだ。」

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