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第79話 不穏な空気

 佳純は組事務所で不穏な話を耳にした。キシと一緒にいた時、小耳に挟んだ。  若頭の黒川が、ヤマたちを呼んで話している。 「この頃M会の奴らが『花束』に顔を出してくる。牽制してるのか、こっちに挨拶無しだ。」  『花束』は上田組がケツモチしているキャバクラだ。キシの母親の麗華がママをやっている。  数人いる黒服はみんな上田組の息のかかった男たちだ。以前、麗華が結婚していた男は、今はM会の構成員として寝返ったが、堂々と店に入ってくる。恥知らずだ。   今でも麗華を自分の女のように言っている。 「いらっしゃいませ。」 「おー、麗華を呼べ。」  その夜も肩で風切る勢いで、M会の幹部らしい男を数人引き連れて店に入って来た。 「まだ、アンタは亭主ヅラして来るのね。 この辺りをうろついて欲しくないわ。」 「おー、怒った顔も綺麗だな。 今日はこちらの兄貴が,話があるんだと。」  強面の男が 「以前、こちらで働いていた娘の事で ちょっと聞きたいんだが。」 「はあ?誰の事かしら?」 「ノアって言えばわかるかな? あと二人いたなぁ。美知といずみ。  あの娘たちは未成年だったでしょう? ウチの知り合いの娘で、親御さんが非常にお怒りなんだよ。」 「働いたって言っても二日ほどですよ。 未成年とわかってすぐに辞めてもらったのよ。」 「それじゃ済まねえんで。 傷モノにされたって言うのでね。」  元夫のチンピラがことさら大声で 「へえ?この店は枕営業でもやらせるのか?」  黒服たちがザザッと集まって来た。黒川もさり気なくそばに立つ。 「おーこれは、若頭、自らお出ましですかな?」  黒川の顔色が変わった。 「何の御用かと思ったら、あのアバズレどもの保護者でしたか?  M会の、えーどちらさんでしたか?」  男が名刺を投げた。黒川が拾って名前を見る。 「M会の八巻さん?はちまきさんですか?」 「やまきだよ。あんたが上田組の若頭か? チンケな組だな。ウチは広域指定暴力団だ。 組の規模が違うんだよ。  俺は代行の八巻だ。 大事なお嬢さんを働かせやがって、分かってるんだろうな。」  八巻は金が目当てなのか? 若頭は眉毛ひとつ動かさなかった。 「お子さんの躾も出来ないんですね。」

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