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第80話 父親
「なんだと!」
やたらイキって大声を出す。黒川が呆れて
「あんた、何の代行だって?
組長の代行じゃあるまいな。運転代行か?」
八巻はますますイキって暴れ始めた。
テーブルのグラスを払いのけ、大きな声で怒鳴る。黒服たちが色めきたった。
そこへ貫禄のある男がお供を連れて入って来た。
「あ、中山さん。」
「すまんな。ウチのチンピラが礼儀知らずで。
あんたが上田組の若頭か?
折りいって相談があるんだが。」
奥のVIP席へ案内した。
中山という男はM会の幹部だ。黒川も顔は知っていた。幹部が何の用だろう。
奥の席は特別な設えで、内密な話が出来る。
人払いをして中山と黒川は対峙した。
「お恥ずかしい話だ。
ガキのケンカに大人が口出す事じゃねぇが、今問題になっている動画をご存知か?
今関社長の息子は、もう刑事事件にされた。
動画に写ってた娘の件で困っている。
聞けばここで働いてたというので、こうして訪ねて来たんだ。
被害者に届けを取り下げるように言って欲しい。あんた、何か知ってるんだろう?」
「被害者の少年ですか?
あの娘たちと何か関係あるんですか?」
一方的に殴られていた被害者と知り合いではある。
「被害届を出されたら、あの娘の将来が潰れる。
前科持ちになってしまう、と親に泣き付かれてね。」
あのJKがヤクザの関係者?
(どうしようもないクズだな。)
「他にも何かありそうですね。
ウチの親父に報告しないと。独断でお答えできかねる。
もう動画は出回っている。デジタルタトゥーってご存知ないか?」
中山は何もかも知った上でここに来ている。
「あの被害者は重症で入院してますから、傷害罪で立件されるでしょう。
被害届を取り下げろ、と?
私どもに言うのは違うのでは?
M会とあの娘さんとはどんな関係があるんですか?」
「息子の恋人だ。結婚するだろう。ガキができたんだよ。」
この店で未成年を雇っていたと、警察に言うこともある、と脅しをくれて来た。
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