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第81話 売れる動画
どこかの駐車場か、フェンスで囲まれている。
「もっとやりなよ、ぬるいなぁ。」
周りで囃し立てる声。スマホを向けながら目が爛々と光っている。興奮状態だ。
「これだから、拷問動画とか、売れるんだよ。
再生回数、爆上がり。素人さんは怖いね。
いずみ、おまえ、残虐だなぁ。」
今関はこんな動画を撮るのが大好きだ。観客の興奮も込みで仕上げる。
客はもう、無修正のセックス動画じゃ飽き足らない。残酷な素人の暴力動画が売れるのだ。
M会のいいシノギになっていた。DVDに焼かれて大量に販売される。裏ビデオの殺人バージョン。エロい事をさせられるのではないから、女子高生も気軽に参加する。自分の手を汚さなくて済むから抵抗が無いのだ。卑怯な傍観者。
被害者も加害者も素人を使う。ヤクザが絡むと面倒だ。刑が重くなる。
動画に映り込んでいたいずみという娘が、幹部の息子の恋人だ、という。
「ただの彼女でしょ?
どうしてヤクザの幹部がみずからお出ましなんだ?」
M会の幹部の中山の息子の彼女はまだ高校生のくせに子供がいるという。息子の子、ヤクザの孫だ。育てているのは中山の妾。
何とも屈折している。
「孫は可愛い。この娘は全く自覚がない。
動画に映り込んでいた。面が割れる。」
いずみはヤクザの息子と一緒に遊び暮らしている。中山は強面だが息子と孫には大甘だ。
いずみは小遣い稼ぎにキャバ嬢になったが、年がバレてクビになったという。まだ16才だ。
金に困っていた。
そしてあの動画。暴行の共犯で、動画に映っていた全員が調べられている。
「お宅にゲソ入れたと聞いた猪飼は主犯だろう?
被害者を教えてくれ。」
被害届を取り下げるように頼みたいと言うのだ。黒川は呆れた。お門違いだ。組同士の抗争に発展しかねない。
「中山さん、M会の看板に傷が付きますよ。
正気ですか?」
「バカ息子の事だ。内密にしたい。
ウチの上層部にも知られないように。」
(それでこの店に乗り込んで来たのか?
カチコミか、と思ったぜ。)
組員らしき男が鞄を開けた。中には無造作に札束が入っている。大した金額ではなさそうだ。
一千万ほどか。
「あんた、誰に頼んでるのかわかってるのか?
息子の不始末、他の組に頼む事じゃ無かろう。
気は確かか?こんなはした金で。」
中山は苦い顔をして黙り込んだ。まだ、裏がありそうだ。話が広がっては不味い裏が。
「ウチも舐められたもんですねぇ。
お宅の組の面子を、どうしてウチが守らなくちゃならねえんで?」
黒川は鼻白んだ。
「ウチは小さいながらも古い格式のある極道ですよ。昨日今日集まった野合の集団といっしょにされちゃあ、不愉快だ。
出直して来なさいよ。こちとら、警察とは長年の付き合いなんだよ。」
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