87 / 109

第87話 子供

 今関はもう止まらなくなっている。 「最高だぜ。親父は町の名士だ。 警察も何も出来ないさ。」  今関の父親は、この田舎町の高額納税者だ。 親父が会長の工業団地が町のほとんどの雇用を担っている。町の産業の中心だ。  今関のスプラッター動画はもう限度を超えて犯罪だ。以前から暴行事件として起訴されるべき案件だったが、なぜか、注意で済んでいた。  警察も工業団地の献金で潤っている。町の重要な産業を牛耳っている今関の父親に手が出せない。政治家を巻き込んで町全体が腐りきっている。 「M会がこの町に事務所を構えてから,町の治安が酷くなった。ガキどもが調子に乗ってんだよ。」  町の年寄りたちが嘆く。何もしないで傍観者を決め込んでいた老害たちにも非は大きい。    今関は狂った事を言い出した。 「ねぇ、M会の兄さんよ、俺、子供殺してみたいんだよ。アメリカのムービーで見たんだよ。」  今関は調子に乗って脅しをかけてくる。 「あんたがコンテナに隠してるヤクをバラしてもいいのかな?」  弱みを握られている中山は、自分の孫の事を所望されているとわかった。 「あんた!何考えてんのさ。自分の孫を差し出せって?昔の中国みたいにか?  あたしは許さないよ。」 友里恵は、思い切り殴り飛ばされた。赤ん坊は泣き叫ぶ。孫は今まで妾の友里恵に大切に育てられていた。 母親のいずみは、 「あたし、ガキきらいなんだよね。 ウザいからいらない。今関君にあげてもいいよ。欲しくなったらまた作るから。」  人の心はないのか? 今関は完全に精神を病んでいる。隔離が必要だ。 M会は黙ってやらせているのか。  上田組の組員たちが怒りに立ち上がった。 「政治屋どもがみんな無かったことにする。 朱里ちゃんの被害届も、カタワにされた康治の事も真面目に捜査してくれない。  一体どうなってるんだ?」 「ヤクザはやられっぱなしで死ねばいいとお国がそう思ってんだな。」  みんなやり場のない怒りに震えていた。 「武者震いだ。俺たちのやり方で落とし前をつける。」  キシたちは、水杯(みずさかずき)を交わした。 (最後にもう一度佳純を抱きたかったなぁ。)  キシはしみじみ思った。 話はどんどん進んで、事を構える用意は整った。 「どうするんですか?」 「今関を拉致る。 同じ思いを体験させてやろう。」

ともだちにシェアしよう!