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第89話 佳央の部屋

 久々に佳央の家に来た。母親が大歓迎で 「今日はおでんにしたのよ。 大根が安かったから。一杯飲めるといいわね。 日本酒の熱燗がいいのよ。」  佳央の母親は結構酒がイケる口で 「早く大人になって一緒に飲もう。」 と佳央が子供の頃から言っている。 「酒はいいよいらない。 おでん食いたい。」 「もう少し。大根に味が染みたらね。」  佳央の部屋に来ると、佳純は我が物顔でベッドを占領する。 「絵、出来たんだな。県民ホールにあるんだろ。 今度見に行くよ。」  写メに撮ったのを見せた。 「なんだか恥ずいな。俺、裸じゃん。」 そう言った佳純にキスされた。 「ぷはっ、いきなりはやめろ!」 「この頃、なんだか不穏なことが多いな。」 「気持ち悪いよな。特に女子が怖いよ。」 「バンドのことを話そう。 今、組み内が落ち着かないから黒川もアテにはできないんだが、ユキたちと真剣にやろうって言ってる。」  新曲が出来つつあると言うので楽しみだ。 売れるとか有名になるとかは全く考えて無かった。佳央は、俺の絵と同じで将来性もなかろう、と思っていた。 「キシさんとはうまくいってんの?」 「ああ、たぶん。」 「多分って何?」 「ヤクザに明日はない、って事だ。」 「怖いこというなよ。」  入院していた工藤が退院した。でも障害が残ると言う。 「許せねえな。」 「おまえさ、誰が一番悪いと思う?」  佳央はずっと考えていた。全ての経緯を知ってる訳ではないが、考えると闇が深い。 「俺は今関が許せない。でも、あの女どももダメだ。それと、取り巻きで煽ってた奴ら。  名前は上がってるんだ。警察は隠蔽している。」  佳純が佳央の手を取って繋いできた。 「寂しくなるんだよ。 暴力の先にあるものを考えると、怖くて・・ そして寂しい。  人間の性、なんだな。」 「そういうの、哲学っていうんじゃね?」 「兄貴なら答えられるかな。 人の弁護なんかしてさ。」

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