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第97話 会いたかった

 久しぶりにキシの部屋に泊まった。座って煙たそうにタバコを吸う大人の顔のキシ。  隣に座って気まずい思いの佳純。 肩に手を回して抱き寄せてくれる。顎に手を添えて唇を食む。  角度を変えてくちづけが強くなる。 「はあ、会いたかった。」  頭を抱えて激しいキス。その胸に倒れ込む。抱きしめられて唇の感触を思い出す。  おでこをくっつけて見つめ合う。またキス。 もう蕩けそうだ。 「抱いて。裸で抱き合いたい。」 「女みたいな事言うね。女の子と遊んだの?」 「ないよ、そんな事。キシは?」 「そんな余裕は無かったな。 警察はしつこいんだ。」 「余裕があったら浮気するんだ?」 「いつから、そんな事言う子になったんだ? 俺の佳純はヤキモチ焼きかい?」 「ごめん、取り調べって大変なんでしょ?」 「ああ、同じ事何回も聞かれるんだけど、少しでも前と違ってるとそこを突っ込んでくるんだ。  絶対間違えないように緊張してなきゃならない。すごく疲れる。  嘘ついてなければ絶対に間違えないで供述できるはずだって言われるんだ。  一言一句同じことばかりだ、さっき言っただろ、なんて言えない。それが何時間も続くんだよ。疲れるんだ。」 「酷いね、犯人でもないのに。」  警察は今関の息子の消息を知りたいのだ。 今頃は魚の餌になっている、とは言えない。  警察もあんなサイコパスはいらない、と思っても親がうるさ方なのだ。どうしても行方を知りたいという。  あの工業団地のボスである、今関の希望で、帳場は畳めない。長期間の捜査本部だった。 「突然姿を消したって言うんだ。 恨みを買ってたから、誰に殺られても不思議ではない。  上田組とM会の両方から目を離せないな。」 あまりにも酷いことをしていたので犯人を絞り込めないというのだ。  キシはM会の若い奴と殴り合いをした事だけしかない。立件出来るような事は何もしていない。 被害届も出ていなかった。 「また、来てもらうから。」  そう言って放免されたと言う。  佳純は首に抱きついて 「キシ、どこへも行かせない。 俺ずっとキシのそばにいるよ。」  キシは笑って頭を撫でてくれる。

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