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第101話 ホスト
今から5年ほど前。
「いらっしゃいませ。」
端正なイケメンたちが一斉に声を出す。
ヤマとキシが飛んできてエスコートするのは近頃話題の女性実業家、花田美鈴だ。
「美鈴様、こちらにどうぞ。」
奥のVIP席に案内する。この店は今売り出し中のホストクラブだ。イケメンを揃えて業界でも話題の店だ。どこから手を回すのか業界にも根回しが出来ている。
売り出し中のイケメンアイドルを芸能界から引き抜いてきて、マスコミ、媒体など、隅々まで売り出す。店のネームバリューを広げるためならかなりの金を注ぎ込んでいるだろう。
その資金はどこから出ているのだ?
この店はホストの締め付けが厳しいと囁かれている。売り上げ、売り上げ、と追い込むやりかた。ホストたちは汚い商売をするようになる。
支配人の目がきつい。
「もっと客に高い酒を飲ませるんだよ。」
ヤマとキシは同い年のせいもあって、よく話をする。
「お友達ごっこはいらない。
お互いがライバル、蹴落とす相手だ。
気を抜くな。足元を掬う奴がいるぞ。」
ホスト同士が仲良くするのを嫌がる支配人だった。店は騒がしく、意味もなく大声で盛り上げようとする。コールと呼ばれる掛け声で、一気飲みをさせられる。
「吐いてからが接客だ。死ぬ気で飲め!」
毎週末、売り上げが発表され、ナンバーが決まる。
売り上げが目標に達しないと裏に連れて行かれてリンチされる。
商売道具のホストを傷つけるのは、愚の骨頂だった。
この店の経営は、近頃のさばってきたM会だ。
暴力団、主に関西に多く散らばる新興勢力だった。
北関東に初めて進出してきた。それだけに幹部連中は、のし上がろうと必死だ。
あまりにきつい売り上げ設定、に接客が下品になる。枕営業が強要される。
キムが顔を腫れ上がらせて来た。
「どうしたんだ?」
支配人に呼び出されてヤキを入れられた,という。
「酷でえな。
今度俺の客が来たらキムも呼ぶから。
支配人には俺たちが話すよ。」
ヤマとキシは話し合った。
高いシャンパンをお客さんに押し売りするのは
嫌なもんだ。
売掛がかさんで払えなくなるのを見るのもつらい。
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