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第104話 ヤマとキム
「酷いね。美鈴さんの売掛を全部ヤマとキシで払わなくちゃいけないの?」
話を聞いていると支配人が出て来た。
「美鈴さんが払ってくれるならうちの店は構わないよ。ただ、決済に金利がつくから即金で払ってもらおうか?」
月末まで、と言われた。一千万近くになる。
一介のホストが払える額ではない。
フローラルグループには連絡がつかなくなっていた。最初から計画的に追い込んできたようだ。
3人の出会いはキシが18才のころ。喧嘩に明け暮れて学校にも行かず、新宿トーヨコ辺りをうろついていた。
のちに有名な格闘家がプロデュースする格闘イベントが人気を博したが、そのきっかけとなったのはこの頃の悪ガキたちの格闘ゲームだった。
キックボクシングがベースの一分勝負。
素人の「腕に自信あり」「喧嘩上等」が集まりジワジワと人気が出て来た所だった。
そのうちキチンとルールもでき、SNSの高視聴率番組になる。
その最初の悪ガキの一部がヤマとキシだった。
二人は負け知らず。
「トーヨコにめっちゃ喧嘩強い奴がいるんだよ。」
噂が、SNSで話題になった。
キチンとプロデュースされる前の野放し状態の
試合がエキサイティングだったと伝説になっている。その初期メンバーがヤマとキシだった。
格闘試合で相手に怪我人が続出。保険もない。ヤマたちはその賠償に追われていた。
「あーあ、金にならねえな。
殴られ損だよ。他に儲かる仕事は無いかなぁ。」
韓国大会と称して勝ち上がって来たのは、キムだった。線の細い繊細なキムはカンフーの使い手だった。テコンドーとカンフーの手練れ。
ヤマとキシとキムは一緒に暮らし始めた。
「ダメだよ。手加減しなくちゃ。
本気でやったら、相手ケガしちゃうよ。」
3人の財布を握ったキムが言った。そんな殴り合いの日々だったが、いつも金が無くてピーピーしていた。
ある日、ホストのスカウトに声をかけられた。
「兄さん達、強いねぇ。
どう、ホストやらない?」
「何だよ、おまえら出来てたの?」
キシの問いにヤマとキムが
「ああ、だからもう殴り合いは辞めたいんだ。」
ヤマは
「ああ、いくら強くたって可愛いキムが殴られんのは嫌だよ。俺も辞める。」
どこの組にも入っていない俺たちは自由だ、と勘違いしていた。怪我人の補償もしてやらなくちゃならない。そんな時にホストのスカウトに出会ったのだ。
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