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第106話 あれから5年

 あれから5年が過ぎた。キシたちは上田組にゲソを入れた。盃はまだだ。  あのフローラルグループは、摘発されたとも聞かない。大規模な事件は起きていない事になっている。どこかで箝口令が敷かれている。  世の中に悪質なイジメと称する暴行事件が多発している。もう犯罪の域だ。  今関が撮っていた拷問動画が、たまに露出すると事件になり、一部の変態サイコパスの仕業だと話題になり、やがて驚くほど早く風化して行く。  人々はすぐに忘れる。イジメ暴行事件の原因は格闘技が暴力を称賛する番組のせいだと、格闘家が糾弾される風潮。 「それでもみんな殴り合いが好きだよな。」 「日本版ファイトクラブみたいなの、やりたがってるよね。」  組の若いもんが言っている。 「俺は嫌だね。暴力反対。痛いのは嫌いだ。」  事務所でキシたちが話している。 「辰夫もなんか体力余ってんじゃね?」 「いやあ、康治さんが一生車椅子だって聞いて焦りましたよ。  俺も誰かに障害を負わせる所でした。 人を痛めつけるのは簡単なんですよ。 馬鹿でもできる。」  辰夫はその行為について、しっかり考える事が大事だと思っている。一つ間違えれば人に取り返しのつかない傷を負わせる,と言うことを考えるようになった。  康治は近頃は杖だけで歩けるまでに回復しているが。 「暴力は簡単なんですよ。それを使わないのが難しい。」  キシにはよくわかる。自分が強い、と慢心したガキの頃。セーブすることの方が大変だった。  頭に血が上るのは恥ずかしい事だ、と知っている。 「ヤクザなんてどうしようもないな。」 「暴力団ですから。」  それでも格闘技がブームになっている。 あのBDみたいなのをやりたい、見たいと言う声が多いらしい。 「キシ、どうだ? 腕が鳴るんじゃねえのか?」 「勘弁してくださいよ。暴力反対っす。」 「わっはっは。」  黒川の兄貴分は豪快に笑った。  上田組は金筋の極道だ。盃も簡単にはもらえない。 「親父の目の黒いうちは安売りはしねえよ。」  若頭の黒川の兄貴分に当たる片桐の伯父貴が言った。 「どうにも、佳純さんは跡目を継ぐ気は、ねえんでしょうか?」 「あいつはダメだ。 ヤクザが世襲である必要はねえだろ。 優秀な跡目候補はたくさんいるだろ。 黒川の、どうだ?」  黒川は実の息子キシの事を思った。 (喜志郎、いい男になったなぁ。 でも,同性愛者なんだよなぁ。)  しかも思いびとは組長の息子、佳純だった。 「他にも優秀な若いもんが育ってますよ。」  いまいち、上田組のシノギは地味だと言われている。ケツ持ちの店がたくさんあるが、近頃無礼な輩が増えている。昔なら博徒で良かったが、今はみんなコンピューターを使ったイカサマが横行している。国際化になり、外国人が牛耳っている。 「ウチで力を入れるのは興行ですよ。 祭り。現代の祭りは音楽フェスですよ。」  黒川が乗り気でいった。

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