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第108話 歌詞
佳純がノートを投げた。
蓮華坐のメンバーが驚いて受け取る。
「なんとなく歌詞みたいなの書いてみた。」
「へえ、佳純が作詞とかやっちゃうの?」
「恥ずいからこっそり見ろよ。」
ジローがキーボードを触りながら綺麗なメロディを奏でている。
「佳純、こんな甘々な歌詞、どうしたんだよ。」
「なんとなく,溢れてくるんだよ。」
あまりにも日頃のイメージと違い過ぎて、みんな驚きを隠せない。ラブソングだ。
「いいよ。俺わかるよ。恋してるんだろ?」
「恥ずかしいからわざわざ言うなよ。」
「佳純は彼氏とうまく行ってんだね。」
「はあーん、ラブラブってことね。」
「恥ずかしすぎるだろ。」
「でも,黙ってられない?
彼氏だよね。彼氏かぁ。」
佳純がゲイと認知された。
「ゲイじゃねえよ。好きになったのがたまたまキシだっただけだ。」
「ああ、誰かを好きになるってツラいもんだよな。」
「ジローは不倫だからだろ。」
「不倫って言うな!
出会う順番が遅かっただけだ。」
ジローの恋人は人妻だ。バイト先のピアノカフェのママ。夫がいる。
「逢えない時間が辛いんだ。今頃、あの旦那に抱かれてるかも、って思うとじっとしていられない。」
ピンクに染めた綺麗なロングヘアを掻き上げて泣きが入る。
ユキがギターを爪弾いて
「このメロディで歌って見て。」
佳純の歌詞を口ずさむ。短調で暗いイメージだ。即興で綺麗な曲を作った。
ーー今すぐ会いたい。抱きしめて。
そしてキスして。
おまえは何を見てるの?
俺無しで平気なの?
そばにいない時、ふとした瞬間に
おまえの匂いがする。
タバコの匂い。
狂おしいほど好き。
いつも思うのはお前の事。
煙たそうにタバコを吸う
おまえの指先。俺を愛して。ーー
「彼氏は大人だな。タバコ吸うんだ?」
「そこ、つっこむところ?」
「他にも甘い恋の歌がたくさん書いてある。恋をすると人は詩人になるね。」
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