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第109話 シーオン、ミッドナイトフェス
上田興行が主催するシーオンミッドナイトフェス。地方の小さなフェスだが長く続く海岸の海が見える駐車場で、夜明けまで、と言うロケーションは最高だった。
これは黒川が昔からやりたい事だったから、楽しそうに準備している。小規模なフェスだ。
黒川は昔は役者をやっていたという。
確かにイケメンでニューフェースとして、当時の俳優年鑑にも載ったと言っていた。
売れない下積み時代に,今の上田に拾われた。
その頃の仲間には、今芸能界で活躍している者も多い。それが黒川の人脈になっている。
「小規模なフェスだけど、業界人が見に来ることもあるそうだ。
チャンスはどこにでも転がってるよ。」
「度胸試しにやって見る?」
「曲作らなくちゃ。」
自主制作CDを作るって張り切っている。
「俺、別に有名になりたくないし。
黒川の顔が今も通用するのかな?」
「反社だと言われて潰されないか、心配だ。
マスコミは反社を目の敵にするから。」
フェスの企画に歌謡曲のプロダクションが名乗りを上げた。
「えー?歌謡曲?何だかダサいな。
昭和歌謡とか演歌とか?
最近流行ってるんだって?」
キシの母親の店、『花束』にも、よく新人の
演歌歌手がキャンペーンにやってくる。
自分のCDを手売りするのだ。その関係で芸能界にも知り合いが多い。
芸能人は反社と繋がりがあると週刊誌に叩かれる。偏見にみちている。
「反社以前にちゃんとした会社なんだが。」
黒川がいつも怒っている。
練習のために、営業が終わった店を使わせてくれるという。蓮華坐のメンバーは大喜びだった。
「心置きなく爆音でやれる。」
ライブハウス『原子心母』もオープンマイクはやっているが、練習させてもらう余裕はない。
常連の出演者がずいぶん先まで予約してるのだ。クラブ『花束』は音響設備が充実していた。
「深夜二時ごろからで良ければ使ってくれ。」
蓮華坐のメンバーは大喜びだった。
金曜と土曜の深夜から朝まで音が出せる。
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