110 / 152

第110話 デリコ

 深夜の店に黒川がデリコを連れて入って来た。 「えー?知り合い?」 「なんで知ってんの?」 「昔、売れない劇団の仲間だったのさ。」  デリコは、黒川に言われて作った、デモCDを聴いて興味を示したそうだ。 「これと言って特徴もない素人のバンドだよ。 何だか変だな。」  ユキが不審がる。 それでも初めて会うジャポニカ・デリコに圧倒された。派手、というか突き抜けている。  性別のわからない、派手なメイク。ファッション。シンガポールから戻ったばかりだと言う。 「日本に興味が湧いて行ったり来たりしてるのよ。 『凍てついた夜』って言うバンド知ってる?  あの子たちが気に入ってオファーしてるんだけどフラれた。日本人って欲が無いのね。  お金じゃ動かない。」  蓮華坐のみんなは 「はあ?」  首を傾げて聞いている。 「1970年代のロック。求めているのはそれ。 CD聴いたわ。」  シャウトする声がいい、と言われた。 「黒川の仕切るフェスが楽しみだ。 2.3曲出来たら、聴きたいわ。」  そう言って帰って行った。忙しそうだ。  佳純たちはボーッとして聞いていた。 なんであんな大物がこんな田舎町のキャバクラに来たのかわからない。 「俺たちの演奏を見に来てるだけなのか?」 フェスの他の出演者を知りたいと思う。 「ここに予定表があるよ。 出演者には、なんか演歌歌手がいる。 のど自慢大会かよ。」  荒く印刷されたプログラムには、雑多なジャンルの出演者が載っていた。 「たまに、歌謡曲をじっくり聴くのもいいよ。 知らない世界だ。」 「佳純の恋の歌はどうした? その後、増えたか?」 「恥ずかしいから恋の歌、とか言うなよ。」 「フェスってお祭りだろ。 田舎ののど自慢大会でいいんじゃね。」  佳純は何だか浮かれた気分だ。 カラオケ大会のちょっと大きい奴って事だろ。 「あのデリコが見に来るんだぞ。 カッコいい所を見せなくちゃ、だろ。」 「カッコいいのはかっこ悪い。」 「オーガナイザーって何だよ?」 「テレビに映るわけでは無いんだよな。」

ともだちにシェアしよう!